第二部 研修報告
1.
はじめに
我が国は世界にも類を見ない速さで高齢社会へ進んでいます。
こうした中で各地方自治体はその流れを推察し、試行錯誤の
政策を展開しているが、特に久留米市では介護保険の導入と
もあいまってこれまた未知の政策を展開している途中です。
また久留米市は平野部の中心に位置し、農業政策は都心部の
経済政策にも直結する重要政策のひとつであり、諸外国の農業
の現状を把握する必要性がある。
最後にゴミ問題は当面する久留米市の課題のなかでも最も喫緊の
課題であり、新規ゴミ埋立地、焼却施設等将来に至るまでクリア
すべき課題は山積されている。
そして我が国はこの10年泥沼のリセッションに見まわれて
久留米市のような中堅の地方自治体もその影響下にあり、景気
浮揚を願う市民の切なる声も空しくいまだに不況にあえぐ毎日
であり、諸外国のすべてを見習い久留米市の浮揚につなぎたい
想いで視察研修するものです。
2.
オーストラリア概況
首都 キャンベラ
人口 約1927万人
面積 約768万Ku
民主主義による連邦国家
1788年、イギリス人がシドニー郊外のポートジャクソン湾に
上陸して以来テラ・オーストラリス(未知の南方大陸)と呼ばれた
この国に多くの人々が入植した。以来移住者の国と呼ばれ、現在
移住者の受け入れは年間7万人。
イギリスとアイルランド 13%
ニュージーランド 9%
香港 8%
ベトナム 7.5%
フィリピン 5%
インド 4.5%
先住民族アボリジニ 2%
である。
3.メルボルン
ヴィクトリア州の州都
面積 7280ku
人口 約328万人
緑に囲まれた優雅な街
メルボルンは面積の4分の1を公園が占め、“ガーデンシティ”と呼ばれる優雅な街だ。メルボルンの歴史はゴールドラッシュと切り離しては語れない。
1850年に州内陸部で金鉱が発見され、世界中から人々が一攫千金を夢見て大移動。メルボルンの北西にあるバララットやベンディゴなどの町が次々と開拓され良港に恵まれたメルボルンは発展の時代を迎える。
1901年〜27年にはオーストラリアの首都として繁栄。その後のシドニーとの首都争いで決着がつかず両都市の中間に位置するキャンベラに首都を制定した話は有名。
4.バララット
メルボルンから車で1時間30分程のこじんまりとした町。
1851年、ヴィクトリア州のゴールドラッシュで発展。こうしたゴールドフィールドと呼ばれる内陸地域が今日のメルボルンの発展のきっかけとなった。
1851〜61年の金鉱地での生活を町ごと再現した野外博物館。ソブリン・ヒルは、鉱夫が重税に対して蜂起したオーストラリアで唯一の市民戦争“ユーレカ砦の反乱”でも歴史に名を残している。
こんな歴史の町に私たちの目指すクイーンエリザベス国際医療福祉教育センターはありました。

5.クイーンエリザベス国際医療福祉教育研修センター

2001年10月4日 視察日程
10:30AM モーニングティー、クィーンエリザベスセンターの概要
11:30AM 見学、タルボットプレースナーシングホーム、ピーターハインズ
レハビリテーションセンター、フードサービス
12:30AM 昼食
13:30 本館出発、南校外別館セバストポール
見学、ジェームストマスコートホステル・ジェシージレット
コート痴呆性老人専用ホステル・エセルロウデイセンター
2:45 本館へ出発
3:00 アフタヌーンティー・ディスカッション
3:30 終了
説明を聞く
説明者 洋子マーフィー
(Yoko Murphy)

パララットヘルス サービス(Ballarat Health Services)
クィーン エリザベス センターの概要
理念(MISSION)
バララット市とその管轄地域に最高のケア、個人の選択権、クオリティーオブライフ
を最大限にする総括的なヘルスケアサービスを提供する
目的(AIMS)
1.バララット市と近辺の住民にヘルス、発育、福利を促進し奨励する
2.限られた資源を最大限に使用し、クライエントの個性、尊厳性、極秘性を認識した上で最高質のサービスを提供し、かつコストを常に考慮したマナーで効率的に提供することを目指す
3.クライエントのケアを最高にする為にチームアプローチを促進し、職員個人の仕事に対する満足感を充実させる職場環境を作る
4.コミュニティーのニーズを明確化し、それに敏速に応答するように活動する
5.全ての人に安全性、安心感,プライバシーが保証されるように建物の環境を維持する
6.サービス提供の管轄地域に適し、コミュニティーのニーズに合うようにヘルスケアを提供し、それを維持又はサポートする
7.管轄地域のヘルスと高齢者ケアの質を向上する為に、近辺の様々な機関/団体と連携を持ち、積極的に参加する
クィーンエリザベスセンターはバララット総合病院とグランピアン精神病サービスが1997年2月に合併してバララットヘルスサービスと名付けられました。クィーン エリザベス センター(略してQ.E.C)はヴィクトリア州のバララット市にあります.この町はメルボルンから北へ車で約1時間半の人口89,500人の英国風の落ち着いた、町の度真ん中に大きな湖と公園があり緑に囲まれ広々とした町です.バララットは金鉱の町として発達しました。 そのころ
成功した人も沢山ありましたが、貧困で病気に苦しんだ人も大勢いました。
バララット市の中心にQ.E.Cがあります。このセンターは1857年に市民がバララット慈悲訪問協会というグループを作り、鉱山の事故等で病気や障害になった人の手助けをするようになりました。そして1860年に60床のバララット慈悲避難所が現在地に建設され、その時の哲学、“虚弱な老人と障害者に自宅で適切なサービスを提供する、しかしそれが出来ないときは施設ケアを提供する”が、現在の根本になっています.1950年代には施設の縮小化が叫ばれ、
最初の別館が1958年にバララット郊外にオープンしました.現存はバララット市の各方角に別舘が出来ています.
Q.E.C.は政府から予算が出ている非営利団体で、高齢者に焦点をおいた総括的なケアを提供しています。
その哲学は高齢者と障害者に、身体的、精神的、社会的な自立を最大限にすることによって、尊厳性かつハイクオリティーな生活が出来るように幅広いサービスを提供することで、独立個別住宅、ホステル、ナーシングホーム、デイセンター、等があります.各郊外の別館はその近辺に住んでいる人が今まで慣れた環境と継続した生活が維持できることをモットーにしています。スペシャリスト痴呆性老人サービスも提供して、重度な痴呆性老人に安全かつ自由な環境で専門的ケアを提供し、スヌーズランルーム(痴呆性セラピールーム)も作ってあります。
デイセンターは全部で4つあり、そのうち1つは痴呆性老人専用のデイセンターとなっています。
以下がセンターの槻要です。
1.コミュニティーサポートサービス(Community Support Services)
* 給食在宅サービス(Meals on Wheels)市役所とタイアップして約500食/日、ボランティアが配達する
* 在宅シーツ配達サービス(Linen Delivery)シーツ、タオル、枕カバー、失禁シーツ(必要な人用)の一セット配達
* 在宅非常緊急コール制度(Safety Link) 独居老人の安全性用、オーストラリア中約10,000人を24時間体制でモニターしている
* アテンダントケア(Attendant Care) 若い在宅暮らしの障害者用ヘルパー派遣
* リンケージサービス(Linkage Services)重度な老人/障害者用在宅ケアパッケージをケースマネージメントしている
* ケアラーズチョイス(Carer’s Choice)施設ケアか在宅ケアの選択を提供し、ケースマネージメントを提供する
2. デイケアサービス(Day Centres) 4つのデイセンターが各郊外にある(1つは痴呆性老人専用でショートステイも提供)
3. クリニカル サービス(Clinical Services)外来診療・歯医者、レントゲン室、クリニカルナースコンサルタント(失禁専門ナース、糖尿病専門ナース)、専門医師の診療、足治療士、メモリークリニック
4. 急性期ケア(Acute Geriatric Care)
* アセスメント病棟(Assesment Unit) 25床(平均入院日数、2-6週間)
* リハビリ病棟(Rehabilitation Unit) 30床(平均入院日数、2-4週間)
* 緩和/ターミナルケア棟(Palliative/Terminal Care Unit)10床
* 精神病性老人アセスメント棟(Geriatric Psychiatry,Asessment Unit) 6床
5. リハビリセンター(Rehabiritation Centre)コメディカル職員がチームワーク
* 作業療法士、理学療法士、言語療法士、栄養士、足治療士、補綴士、ヘルスアシスタント、心理学者、ソーシャルワーカー
* ホームリハビリ サービス
6. 長期施設ケア(Extended Care)
* ホステル(Hostels) 約240床、7つあり(内2つは痴呆性老人専用)、平均年令が80ー85才、日常生活における援助の必要な人用、職員は訓練されたホステルケア
ワーカー
* ナーシングホーム(Nursing Homes)約400床、6つあり(2つは痴呆性専用)、平均年令が85−90才、ターミナルケアも提供
* 精神病性老人ホーム(Geriatric Psychiatry,Extended Care
Unit)16床
7. 高齢者 ケア アセスメン チーム(Aged Care
Assessment Services−ACAS) 長期老人施設入所判定委員会、老年科医師とコミュ ニテイーナースから成り立つチームで在宅サポートサービスの判定/アレンジ、アドバイス、デイセンターとショートステイ利用の判定、等
8.ビジネス部門(Commercial Units)
* クイーンエリザベス国際医療福祉教育研修センター(Q.E.A.C.S) 1992年lO月 に日本人用に高齢者教育を提供する為に独立機関として発足、その他香港の看護婦も卒後教育の実習に来る
* セーフティーリンク(Safety Link)非常緊急コール会社
* 中央リネン洗濯工場(Central Highland Linen Services) バララット近辺の他の病院と施設、メルボルン市の約半分の病院/施設とも契約、その他ホテルやモーテルとも契約している
* フードサービス(Food Services・厨房/ケータリング)様々なパーティーやファンクション(例、ロータリークラブ、結婚式、誕生日、等)にも提供、その他メルボルン市の依託で給食サービスをメルボルンに提供、メルボルンの病院とも契約、メルボルン大学、等
9.その他
* 教育センター・卒後老人看護コース(正看と準看用、1年間)、卒後リハビリ看護コース(正看と準看用、1年間、通信教育も提供)、ホステルケアワーカーコース、リフレッシヤーコース(看護職に戻りたい看護婦用)、院内教育、セミナー、ワークショップ
*図書舘・司書2人
下図は紹介されている組織図をできるだけ掲載した。





提供しているサービスとしては、高齢者ケアアセスメントチーム、在宅ケア、長期満在用老人施設、急性期病棟、そして250床を有するバララット総合病院。征業員数2500人。福祉医学の世界では注目されて久しく、その高度な医療技術と評判の高いケアシステム、いわばハードとソフトの両面を学びに海外からやってくる医学者や福祉関係者が絶えない。
日本との交流も15年前から始まっていて、記録映画の名匠・羽田澄子監督の代表作『安心して老いるために』ではオーストラリアの舞台として登場している。そのドキュメント映画は、軟弱な日本の福祉政策に一石を投じた話題作となった。過去7年の日本人研修生の数は2400人にのぼるというから草の根レベルでの浸透度はかなり深そうだ。最近では、日本の大手日刊紙の論説委員さえ取材で滞在し社説に3日間連載されたというから、その注目度はもう草の根レベルとは呼べないのかもしれない。
日本との関係を色濃く思わせるかのように、施設内には日本風石庭の中庭が施されている。ある日本人有志からの寄贈だという。
シドニーでもメルボルンでもない、100年前ならともかく、オーストラリアの小さな地
方都市に、これだけの吸引力かあるとはちょっと意外である。そんな思いを抱きながら、センターに降り立った私を明るく出迎えてくれたのが、洋子マーフイーさん、こちらのプログラム・マネ−ジャーである。バララット在住25年という、ここの日本人の顔である。洋子さんの説明と館内の見学によって、私のそんな思いは、その後すべて折り合いがついていくことになる。
「すべてのサービスがあると思って頂いて結構です」開口一番、洋子さんは言い切った。
そして施設の暦史、注目される所以のサービスのすべてを洋子さんは明瞭に語ってくれた。
もう何度も繰り返されている話なのだろう。
そして施設内の見学に移る.3年前から始まった改築工事は、4階建てだった施設を2階建てにするためだ。これは政府の理念で「お年寄りを2階以上の場所に住まわせないこと。できるだけ庭と平行に生活させること」という指示があったためだという。そう、Q.E.C.は、政府から予算か出ている非営利施設だ。もっとも基本的なその理念とは、できるたけ家庭の延長という雰囲気の中で治療・療養を行うことである。
長期滞在用の老人施設の床は暖色系のカーペットである。こじんまりとした家庭用キッ
チン。高齢者施設持有の臭いがまったくないかわりに、クッキーの焼けている香りが広が
つている。その甘い香りも実は、セラピーの−種で、嗅覚に「家庭の雰囲気」を促す「家庭の延長の中での治療か理念ですから、家族はもちろん友達もペットも24時間OKです」というから面会というより、おじいちやん、おばあちゃんの家へ遊びに行く感覚となんら変わらないのである。
「入居者には、できるたけ家庭から写真とか自分が使っていた生活用品を持って<るよう
に奨励しています」と言われるとおり、何部屋か室内を見せていただいたが、病室のイメージはない。最先端の医療ペットさえ、見た目は木造のペットに仕立ててある。トイレ、シャワーすべては個々の体の大きさ、また病状によって調節されている。
例えば、右半身不随の患者の部屋のシャワーは、左側にすべての調整が行えるスイッチ
が設置されている。また体調か悪くてべットから落ちる危険かある場合は、べットは床の
高さに調節される。つまりマットレスが床に敷かれている具合だ。「患者中心の医療」と耳
にはしても、現実に目にしてはじめてそれがどういうものか実感がわく。
また、こうした施設(ハード)面だけではなく、システム(ソフト)面も世界に先駆けている。例えば、モニター管理の24時間体制で全国1万人の在宅老人についてのケアシステムも世界初で開始。オーストラリアのような広大な国土のほとんどを網羅している。さらに日本やアメリカにこうした最先端の技術を指導、販売契約を行っているという。
コールド・ラッシュから150年。すでにバララットの鉱脈は細くなっていても、そこか
ら根付いた慈愛精神は次代へと脈々と受け継がれ、これからも精神的にもっとも豊かな「安心して老いる」ことのできる町として今後も栄えていくことだろう。
次に(痴呆性老人ホーム)は個室が完備しユニット・ケアを実行している。
日本の新型特養を先取りしているので、写真と共にここにできるだけ紹介したい。

トイレは各個室についている

流しの高さは調節できるようになっている

シャワーの椅子も調節自由で大変便利

個室の中心にあるユニット・ケアの事務所

ある日本人有志からの寄贈である癒しの日本風庭園


料理教室などがここで行われている

およそ施設を感じさせない木のぬくもりのある建物の内部。自宅と同じ住み心地の施設である

バララットは湖を中心とする美しい風光明媚な街です


バララット さようなら
