年末から年始にかけて国や県の来年度予算が発表され、新聞紙上が賑わいますが、国も県も、歳出されていく先の割合が驚くほど似通っているのに気付きます。

 たとえば、97年度の佐賀県予算約4750億円のうち土木費1184億円(約25%)、教育費1047億円(約22.1%)、農林水産関係665.8億円(約14%)、次に商工関係、公債と続いて6番目に民生費として269億円(約5.7%)となっていました。 

 国家レベルでいえば、建築投資額は 年間83兆円(うち政府投資額は約30兆円)で国内総生産(GDP)の約16%でアメリカやドイツの倍以上で、後進国程この比率は高くなるので日本は特殊例といえる(日経新聞9月21日号)。
 それにひきかえ医療福祉費は27兆円(うち国庫負担額6.5兆円で残りは保険料15.2兆円と地方自治負担2兆円、患者窓口負担3.2兆円)でした。 

 国庫負担のみを比較してみると、建築(土木を除く)には約30兆円でGDPの約6%、医療福祉にはわずかに6.5兆円でGDPの1.3%というみじめな恥ずかしい数値なのです。   
 先進国たとえば英国は、医療福祉がすばらしい事もあり国家予算の40%(GDPの2 割)が医療福祉にむけられているのです(読売新聞10月1日号より)。

 日本の様に、公共事業費と医療福祉費が逆転している国は、後進国以外には無いのである。

 もし日本が他の先進国なみに国民の為の予算配分をすれば、日本のGDPからすれば(英国でいえば医療福祉にGDPの2割使用)100兆円となるわけで、全国民医療費無料にしてもまだ70兆円も余る計算となるのです。
英国並みとはいかなくても、GDPの1割(50兆円)位は最低医療福祉にまわすべきだし、血の通った政治の最低条件ではないでしょうか。
 福祉への投資の持つ経済波及効果は大である(朝日新聞9月4日)わけだし、一般に、国家規模が大きくなれば予算も医療費もふえるものであって、問題にするべきは、その歳出先への額よりもその割合であって民意の求める物にそのほとんどをまわすべきなのではなかろうか。

 マスコミも政府の出す資料をうのみにせず、よくかみ砕いて国民に正しく理解されるような記事を書いて欲しいものである。


 日本医事新報『時事雑感』   1997年12月6日号 78page 掲載済み