だから、より高きを目指して〜おまけ〜
〜〜貴方とラストダンスを〜〜




「ふぅ、どうやら騒動が起きる前に戻ってくれたな」

会場に再び姿を現した5人を見て、シオンは安堵のため息をついた。


「世話をかけたな、シオン」

「まぁ、謝意はいずれ、形のあるもので示してくれ。
しっかし、随分時間がかかったな。もうすぐ最後の曲だぜ。
夜会が終わっても帰って来なけりゃどうするかとヒヤヒヤもんだったぜ」

「…色々とあったんだ」

セイリオスは視線を逸らすと、微かに頬を染める。

シオンはその様子にピンとくるものがあったのか、
両手を軽く上げて降参の仕草をすると、
踵を返して雑踏の中へ消えていった。



ワルツの曲が、会場に流れ始める。
ラストダンスの曲は、いつもワルツだった。


黒髪の騎士が、金糸の髪の騎士の傍に歩み寄って来たのは、
ワルツの曲が流れ出した直後のことだった。

「…ご苦労だったな、シルフィス」

「いえ…私は、何も出来ませんでしたから…。
出来るとしたら、これからだと思います」

「これから?」

「…はい。私がレオニス様の副官になったら、
姫の護衛の任に当たる者が空席になりますので…。
それをガゼルに任じていただけるよう、殿下に進言するつもりです」

「……そうか」

レオニスは、口の端に微笑みを浮かべた。

「私の傍にいてくれるのだな」

「私の望みでもありますから…」

シルフィスは頬を染めながら、レオニスを見つめ返す。

しばしの沈黙の後、シルフィスに手を差し出す。

「…任務中ではあるが…一曲、相手をしてくれないか?」

「……ドレスではないですけれど、それでもよろしければ」




「…ディアーナ、俺と…ラストダンスを踊ってくれるか?」

ガゼルは、ディアーナにそっと手を差し伸べた。
ディアーナは嬉しそうに微笑んだ。

「ええ、私のパートナーは貴方だけですわ、ガゼル」


その場に、気づいた者はいただろうか。
ディアーナは、今までラストダンスを誰かと踊ってはいなかったことを。
セイリオスとですら、ラストダンスをやんわりと拒んでいた。
ただ一人の騎士のために、王女のラストダンスは捧げられる。

気づいた者は…………いた。

「…幸せになれよ、姫さん」

彼は、静かにワイングラスを掲げると、
過去のものとなった王女への想いとともに、その中身を飲み干した。





「ディアーナ達、嬉しそう。よーやく認められたんだものね、当然か」

「…条件つきだけどね」

「ある意味簡単で、ある意味すごく抵抗ありそうだけどね〜。
特に、ガゼルは苦労しそうだし」

『条件』に深く関わるメイは、頬を染めて、
嬉しさ半分、恥ずかしさ半分で、くすくすと笑う。


「…しかし、無茶な条件を突きつけたつもりはないよ?
いずれ直面する問題だ。今のうちに克服してもらわないとね」

「…なんか、セイル楽しんでない?」

「とんでもない。
私が結婚しなければ、ディアーナたちの結婚も難しくなるんだ。
これくらいの条件は必要だろう、とそう言ってるだけさ」

「結婚…そっか。そういうことになるよね…」

セイリオスの口からでた「結婚」という言葉に、
メイは頬を押さえて紅潮した。


「そういうこと。さて、未来の王妃殿、
ラストダンスをご一緒していただけますか?」

深々とお辞儀をしてそう言ったセイリオスに、メイは微笑んで返事をする。

「…是非」



型破りな皇太子妃の誕生は、そう遠いことではなさそうであった。





──余談ではあるが、セイリオスがディアーナとガゼルにだした条件とは。

「──メイを『お義姉さま』と呼べるか?」

………で、あったそうな。

はい、今度こそ終わりです(笑)。全部で6話か、いやぁ、長かった!(笑)
そして、ガゼルは条件をクリアすることが出来るのかっ?それはしらんっ(こら)。
シオンは結局最後まで出張ったな。活躍はしなかったけど(苦笑)
ちなみに、メイは皇太子妃になったのちも、
『目指せ、筆頭魔導師!』で、魔法の勉強に勤しんだそうな(笑)

番外編もUPしました。興味のあるお方はNEXTからどうぞ。
シオンの新たな(?)恋のお話です。