考察:二人の女王の宇宙における、
女王恋愛の可否について


アンジェリークの世界には、二つの宇宙が存在している。
女王のサクリアの限界により女王候補が選出され、試験が執り行われ、試験が終わるとともに新たな宇宙へと大移動した「リモージュ宇宙」。
旧宇宙があった場所――虚無の空間に、あらたに生まれた、新宇宙、「コレット宇宙」。
コレット宇宙はリモージュ宇宙の場合と違い、女王の力の限界によってではなく、虚無の空間に生まれた聖獣によって候補生が選ばれた。
これは、小さいようで大きな違いである。それは後々述べたいと思う。
ここで様々な人からの指摘もあったと思われるが、リモージュ宇宙においては、裏面実状はどうあれ、公式には、トロワ発売時現在、「女王の恋愛」は認められていない。
前女王が候補生であった折りに、某闇の守護聖との恋愛話があったものの、女王となってからはまったく見受けられないのがその証拠とも言えるだろう。
そして、逆にコレット宇宙においては、「アンジェリークトロワ」において、はっきりと女王の恋愛が可能であることを証明してしまった。
ここで問題となるのは、何故リモージュ宇宙において女王の恋愛が認められないのか、ということだが、私が耳にしただけでも、様々な説がある。

仮説1.女王の神秘性を高めるための政治効果を狙った、単なる悪しき慣習
仮説2.宇宙のことだけを思っていなくては、宇宙空間が崩壊してしまう
仮説3.女王とは巫女のようなもので、純潔でないとサクリアを保てない

大きくわけて、この3つである。
仮説1.女王の神秘性を高める政治効果を狙った単なる悪しき慣習

まずは仮説1であるが、信憑性は低い仮説である。
なぜならそのような政治効果を狙わずとも、女王は十分に神秘性の高い存在であるからだ。
よほど民から、ある種の信仰心とも言える、女王への信頼が乖離しているのでなければ、そのような非常の手段を用いる必要はないのだ。
そして、これは女王自ら布告しない限り、臣下側からは畏れ多くて行えない。
仮に女王の意志により行われたとしても、果たしてそのような布告を行う事態が、それほど長きにわたって続いたとは考えにくい。
今現在、少なくとも女王統治制度は広く受け入れられているからだ。
何十世代も前に布告され、制度のみが続いてきたという可能性も考えられないこともないが、アンジェリーク=リモージュが女王位に就くまでの256代、すべての女王が唯々諾々とこの慣習を何の疑問も持たずに受け入れてきた、というのも考えにくいものがある。

仮説2.宇宙以外に気を取られると、宇宙空間が崩壊してしまう

次は仮説2である。これは、アンジェリークシリーズ以外に、ひとつわかりやすい例がある。
CLAMP著「魔法騎士レイアース」における『柱制度』である。
この作品の中において「柱」となった者は世界の安定のみを願い続けなければならず、誰かを愛してしまうと、その者の幸せのみを考えてしまうがために、世界が安定せず崩壊してしまうのだ。

これは女王という特殊な存在を考えれば、なかなか信憑性のある仮説である。
傍証として、前女王の恋愛を挙げよう。

前女王が候補生の折り、闇の守護聖との恋愛が囁かれていたのはご存じのことだろう。
その当時は女王試験は行われていない。
というより試験が行われたリモージュ・ロザリアの女王選出の方が特殊なのだ。
試験が行われるのはそれほど特殊な事態なのだ。前女王就任の時には、それがなかった。
つまりは宇宙はとくに問題もなく、安定していたと見られる。
だが、女王就任から、次の女王候補選出までの期間は、あまりにも短い。
女王就任は17歳。女王試験が行われたのは推定年齢21歳の時である。
聖地時間ではあるが、安定していた宇宙がたったの4年で、生命力あふれる別の宇宙に移動しなければならぬ程に不安定になったのだ。
数々の資料を見る限り、前女王は闇の守護聖をフッたのではなく、すれ違いの果てでの女王就任であったように見受けられる。
もしもそれが凝りとなって残っていたがために宇宙が不安定になったとしたら、これはこの仮説を裏付ける重要な例となる。

ところがこの仮説には、どうしても避けて通れない、相反する事例が存在する。
「天空」及び「トロワ」においてコレット宇宙女王の恋愛が出来た、という事実がそれである。
明らかに恋愛関係に陥り、相手のことに心を奪われている状態でありながら、コレット宇宙は安定して発展を続けているのである。その証拠として、「トロワ」の舞台となった浮遊大陸は、数万年以上未来の世界から来たものである。
宇宙創世記の初期において不安定になるような事態にはなっていなかったということだ。
これはある推論により説明が可能なのだが、それは後述する。


仮説3.女王は巫女のようなもので純潔でないとサクリアを保てない

そして仮説3である。おそらくこれが一番多くの人が考えている仮説ではないだろうか。
女王がサクリアを維持するためには、乙女――「未通女」でいなくてはならないのだとしたら、この仮説は前述の仮説の矛盾点をすべて説明することが可能となる。

まず仮説1で問題になった「歴代の女王が唯々諾々と受け入れてきた事実」も、異論の余地なく、女王のサクリア最優先ということで説明が付く。
政治効果に関してはこの際この考察には直接的には関係しないが、崇拝する対象が女性…それも乙女であるとすれば、これは十分に政治効果がある。
悪い言い方をすれば偶像として祭り上げるには打ってつけの存在となるのだ。

次に仮説2で問題となった「コレット宇宙の女王の恋愛成就の事実」であるが、誰かに心を奪われている場合であっても、純潔であれば女王のサクリアは保てるのであれば、精神的なものであれば、執務を放擲しない限り女王恋愛は不可能ではないということになる。
むろん、プラトニックな関係を退位までの数年強いられ、それを維持しなければならないが。

ここまでは、矛盾なく展開できるように思える。だが、この仮説3にも、矛盾点は存在する。

プラトニックの関係を維持できるのならば、リモージュ宇宙においても女王の恋愛は可能のはずだという矛盾点が出てきてしまうのだ。

検証

何故コレット宇宙の女王の恋愛は公的に認められたのかだが、ここで、冒頭で述べた「宇宙の意志」――「聖獣」の存在が俄然重要性を増してくる。

コレット宇宙の女王は、「宇宙の意志」=「聖獣」を、その半身としている。
宇宙を統べる存在として女王、そして宇宙の意志を司る存在として聖獣がいることになる。
この役割分担を見ると、ある重要なことに気づく。
すなわち、女王がいなくなったとしても、宇宙の意志を司る存在、聖獣は残るということである。

コレット宇宙の女王が候補生であった折りに話を戻そう。
誰でも、一度はやってみたことがおありではないだろうか。
即位直前、意中の人の元へ告白しに行き、だが想い実らずに失意で即位式に望み、その女王位になんらの価値も見いだせなくなったがため、女王位を辞退した場合のことだ。
その場合でも、ゆっくりとではあるが、新宇宙は女王不在のままで発展する事が可能となる。
統治者不在の宇宙でも、宇宙を司る存在がいることによって、崩壊を免れることができるのだ。

つまり、なんらかの理由により女王がサクリアを失うという事態になっても、リモージュ宇宙の女王試験の時のような切迫した状況には陥らないということである。
空位ののち、次代の女王を選出することが叶えば、女王を退位するのに問題はなくなる。

女王が唯一無二の存在であるリモージュ宇宙。女王ともに導く存在があるコレット宇宙。
リモージュ宇宙とコレット宇宙の決定的な違いは、そこにある。

これは仮説2にも仮説3にも当てはめて考えることができる。
では、その場合それぞれの仮説はどう変わるかを見てみよう。

仮説2の場合、女王が、恋愛関係になった人に心奪われた状態であっても、発展速度は些か落ちるだろうが、聖獣の存在によって、宇宙を発展させ続けることができる。
また、女王試験において、すでに女王としての資質は十分に培われているし、聖獣自らが選んだ女王候補が、四六時中執務を放擲するような人物とも考えにくい。

仮説3の場合、聖獣の存在を考えると、仮説3で最後に述べた矛盾点の説明ができる。
というより、これ以外に説明のしようがなくなる。
ようするに「プラトニックの一線を越えてしまってもなんとかなるか、ならないか」の違いである。
ぶっちゃけた話、聖獣はピンチヒッター扱いとなるのだ。


私的考察:結論

信憑性、蓋然性から考えて、「仮説3.女王は純潔でないとサクリアを保てない」を推奨する。
仮説2であると、リモージュ宇宙では、いかに公的に認められなくても、女王が誰かに心を奪われただけで、安定した宇宙がいとも簡単に崩壊に陥ることになり、また、「歴代の女王がすべて、守護聖に心を奪われる状態に陥らなかった」、という可能性は、きわめて考えにくいのがその理由である。

もしこの考察が正しいのであれば、女王退位までプラトニックの関係を維持できれば、
リモージュ宇宙においても、女王の恋愛が公的に認められる時代が来るかも知れない。
いつか、「女王アンジェリーク=リモージュ」の恋物語を創り出せる機会が訪れることを、神と、女王陛下と、制作サイドに祈ろう。