いつの選挙においても有権者の最大の関心事は医療社会保障関係である事はいつも行われているアンケートでも自明の理である。
「高齢者対策等の福祉の充実」はいずれたどる我が道として国民の最大かつ永遠のテーマである事に異論はない。
しかるに、今年の9月からは健保本人の2割負担、幼児以外の全国民への外来の薬剤費負担の開始と共に、将来への不安の序曲が厳かに奏でられはじめた。

  国民の不安は、即我々開業医のみならず医療業界全体の不安であるし、それでなくても我々は「何は無くとも健康でありさえすれば」と願う国民の最大の味方であり続けなければならないのであるが、はたしてその責務を果たしたと言えるのであろうか。
 
  話はかわるが、将来への不安は農業関係者においてもしかりで、今秋の米価下落や政府米の買い入れ削減の動きは、今までほぼ無条件に与党議員を推薦していたのに対して、農村部からのつきあげで、国会議員への異例の「推薦面接」を行ったとの新聞報道(10月17日)があった。
報道によると佐賀県の農協中央会会長が会長をつとめる県農政協議会 (農政協)は県農協会館に、推薦申請が出ている現職の自民党議員を呼び、氏の農政への基本方針を聞き、更に氏から「政府米の全量買い上げ」「山間地の農業保護」への確約をとり、改めて後日推薦するかどうかを決めるとの事である。
  農政協のこの動きは、言って見れば農業従事者の問題かもしれないが、国政に積極的に関与していこうとする姿勢を我々は真摯に学ぶべきなのではないだろうか。

  我々の、患者負担増反対の運動は、全国民を味方につけての主張になりうるのである。
必要でもないダムや、河口堰への数兆円の支出を含め年間50兆円もの公共事業への投資に比し、年間23兆円しか医療福祉年金に支出していない事への怒りをぶっつけつるべきではないのか。
国民医療費が 27 兆円になったとさわぐが、国庫負担分は7兆円強しかないのである。
このように、医療福祉年金への国庫負担と公共事業費が逆転している国は、アジアやアフリカの低開発国しかないのである。
国家予算の配分をもっと国民に血の通ったものにさせるために、最前線で医療福祉に携わる我々開業医が為すべき事の手始めとして、農政協に学ぶ事は多い。              
 
  ちかごろ、小泉厚生大臣が「郵政事業を民営化しなければ大臣を辞す」といって首相をあわてさせ、 100%国営論から民営化へのニュアンスをもった方向ずけにかわったが、今度の健保法改正の論議中に身を賭して国民の為に反対した議員は誰であったのかはっきり見据えておかなければならない。
もっとも、小泉氏は自分のおかれている厚生関係の事案なのに、健保改悪には積極的だった事は失笑を禁じえない。
  健保改定に対し、医師会内部でのみグチをいってもなにもならないのであって、国民国会をまきこんで、 真に国民の為の健康と福祉の充実した社会をめざす為に医師会は国民のオピニオンリーダーであらなければならないのである。
そうでなければ医師会の存在価値は無いといっても過言ではない。
 
 県医師会諸氏のご意見を請う次第であります。

              
   「医界佐賀」 掲載済み
     199712月号