胃がん、子宮がん、肺がん、乳がん、大腸がんの検診が市町村に義務づけられていますが、この事業がいま岐路に立たされています。

 1月、厚生省は全国の市町村に対して、がん検診の同省負担金の打ち切りを通告し、同時に検診実施の法的義務も廃止したのです。
国が3分の1、県が3分の1、市町村が3分の1を負担してきたがん検診ですが、平成10年度からは県負担分も含めて3分の2を一般財源として地方交付税に算入するというのです。
今までと同額が交付される保証はなく、また使途を特定しない一般財源とされるので、どれほど検診事業に回されるかも疑問です。
事実、福岡県では、今回の措置を受けて、がん検診を廃止する自治体が出ました。
 
  平成8年度のわが県のがん検診は、のべ20万人弱が受診しています。胃がん検診で90名、子宮がん検診で34名、大腸がん検診で79名の方にがんが発見されています。
日本人の死亡原因の1位はがんであり、県のがん死亡率は全国でもワースト1位ないし5位となっています。

  今必要なのは、希望する日に希望する機関で検診が受けられるようにするなど、受診率や精度の向上を通じた制度の充実だと思います。
今回の検診負担金の廃止は「がん死をなくそう」という運動にまったく逆行するものです。

 厚生省が今回、がん検診負担金を打ち切った背景には、国の財政事情があったと聞きます。
しかし、がん検診事業への厚生省負担金は、全国で総額174億円です。
銀行支援の30兆円の1700分の1です。

  がん死半減プロジェクト推進本部を作ってがん対策に熱意を表明しているわが県で、必要なのはがん検診事業の充実などの総合対策です。
がん検診を廃止する自治体が一つも出ない事を祈ります。
 
 佐賀新聞(1998年4月6日号)掲載済み