「主張」 

「存亡の危機に立つ有床診」


  厚労省の社会保障審議会医療部会は、やっと今年度から有床診についての論議に着手し、マスコミにもとりあげられてきたが、まだ残念ながら大きな声になっているとは言い難い。

  部会の委員のなかに当事者たる有床診の代表は皆無で、委員に配られた資料には「有床診に配置が義務付かれているのは、管理者たる医師一名のみで医師の宿直義務も無い」などと書かれていて「有床診は何の規制もないままにやりたい放題だ」と言わんばかりの委員の発言もみられるが、現実を見ていない暴論といわざるをえない。「人員や設備に明文化された規制が無いから、最低限の人員や設備でやっているにちがいない」という意見が出てくること自体が悲しい。

  ほとんどの有床診は、同一の敷地内に医師の住居を構え、看護師の当直制をひき放射線診断装置や心電図や超音波診断装置、胃や大腸の内視鏡位までは装備しているし又、そうでなけりゃ存続していけないというある種の使命感を持って日々精進しているのである。病棟の廊下幅や病室面積などの施設基準をクリアすることを義務付けられたし放射能漏れのチェックも定期的に行う義務を負い、酸素配管すれば検査を受け、厨房も設備や衛生防火対策が適正かのチェックを受けさせられたりと行政からの監視は枚挙にいとまがない。

  この他いろんな規制があるのに、入院基本料だけをみても、病院の入院基本料Iは1日1661点、入院基本料5でも1日1233点なのに比べ有床診で一番多いI群入院基本料2は1日679点で2週間を過ぎると1日541点となり3食看護師付きでも、検査や医療行為のない介護施設や素泊まりのビジネスホテルより安いというので毎年約千箇所づつ有床診が減ってきているのである。(ちなみに無床診療所は毎年約2千箇所増えているが。)いまのままでは有床診を新設すること自体無謀なことでありまた、診療報酬が十数年もほとんど据え置きであるので有床診のベッド部門は「社会奉仕だ」と揶揄される所以である。

  保団連では有床診部会長の哲翁先生を先頭にして6月27日(月)に厚労省に赴き社会保障審議会に対しての要望と資料の提出がなされました。先生によると、7月中旬に厚労省としての「中間とりまとめ」をだすとの事で、年内には最終答申がでるとのことです。外国には無い「日本独自の文化」たる有床診の火を消さないためにも声を大にして主張していくべき時期にきているのではないでしょうか。
   
佐賀県保険医新聞 2005年7月号「主張」より