「主張」 

混合診療解禁で喜ぶのは誰だ?

           
  規制改革・民間開放推進会議(規改会議)が発足したのが04年4月で「国民生活にかかわり深い」4項目を重点取り組み対象とし、そのうちの2項目が医療分野であった。つまり医療福祉分野への予算削減と、医療分野での新たなビジネスチャンスを狙う政財界の思惑を達成すべく作られた財界人と御用経済学者で作るミッションであった。

  1項目目が「混合診療解禁」で2項目目が「病院経営への株式会社の参入」で後者は、構造改革特区での株式会社病院を企画したが応募者なくお釈迦になり(儲かる目途がたたないと財界人は引くのも早いようだ)、「混合診療解禁」を協力に押し付けてきたわけである。混合診療解禁になれば、医療技術の革新や進歩による新技術の数々がまた、今後次々生み出されてくる「夢の特効薬」の多くが自費扱いになるので患者負担が増大し、「良い医療は金持ち階級だけのもの」となる。製薬会社も膨大な手間と金の必要な新薬の保険適用申請を控えて自費扱い薬品を増やしていくだろうしまた、逆に安全性も効能も確認されないわけのわからない民間薬も大手を振って自費扱いで出回ることとなる。

  差額徴収が増えてくるので、ひいては民間保険に加入せざるを得なくなり国民皆保険制度の崩壊へと進むことになるのである。規改会議が参考人として国会で意見陳述を求めた「日本がん患者団体協議会 (略称JCPC)」の代表者も「海外では標準的な化学療法でも日本で認められていない薬剤を使うと、一連の医療が自費扱いになるので、混合診療を認めてもらえば、抗がん剤は自費で払い、その他は医療保険で」との意見であるが、全くその通りであるが基本的には「良い薬」程、早急に保険薬価に組み込むのが本来の形である。

  外国で評価されているなら一年間「特定療養費」扱いにして副作用などのチェックを公的機関で行い問題なければ保険対象に格上げすれば、安全性を確認出来て薬の自費扱い期間も一年間で終わり、問題はないわけである。規改会議が「混合診療解禁」の切り込み隊長として送り込んだ患者代表も後日「なにも混合診療にこだわらない。一刻も早く外国で評価された薬は日本でも使える体制になって欲しい」との意見である。 

  11月23日朝日新聞で李啓充ハーバード大助教授も述べているように、混合診療では 1)自費診療分を払える人だけには選択肢がひろがるが他の多くの人は「それなりの治療」でおわる。2)製薬会社は未承認薬を希望価格で売れる。3)民間保険市場の拡大 4)日本の医療費は先進国で最低ランクだから、混合診療の議論より、公的医療費の拡大をめざすべきだ。 市場原理で運営されている米国でも公的に年間70兆円医療費負担している(日本は8兆円)のだから。5)保険診療の空洞化  6)科学的根拠がしっかりした治療法は直ぐ保険診療に組み込む 以上の5点をふまえて真の「国民のための医療制度」を作っていくべきである。
       

佐賀県医師会報「医界佐賀」 2005年2月号掲載