文芸春秋1998年5月号の「医療ビッグバン 病院沈没」を読まれた先生は何人おられるであろうか。
このレポートを読むと、「知らないのは医療業界人だけ」で、知らないうちに政治家レベルで事は着実に進行しているのである。
近い将来コメの市場開放のように又金融ビッグバンのように大再編の波が2年後のWTO(世界貿易機関)のサービス交渉において、おしよせるというのである。

  知らされていない事が悪いのか知らなかった事が怠慢だったのか。
いずれにせよ事は風雲急を告げているのである。
1993年のウルグアイラウンドはコメの問題がその大部分であったかに理解していたが、実は医療分野を含めて百五十五の業種について自由化の協議が行われそのうち約百の分野で日本は自由化を約束していて、医療もその中に含まれているとの事らしい。

  医療の分野で自由化を約束したのは、アメリカ、EU、マレーシアと日本で、2000年に行われるWTOの見直し作業にまるで無関心な日本の医療業界に注意を喚起しているのは厚生省の役人ではなく、通産省のA課長補佐との事で開いた口がふさがらない。
コメ市場開放の時に見せた農協パワーの凄まじさですら阻止しえなかったのに、何の抵抗も又見せる時も場もないまま指をくわえたままで良いのだろうか。

  外国病院経営資本の上陸、 病院と保険会社の「治療契約」締結とDRG に準じた定額払い制度、病名に応じた治療の画一化とパターン化、病院の格付け等が行われる。
患者も医療サービスも採算性の悪いのは切り捨てられるのである。
低コストで効率のよかった日本の医療はどこえいくのであろうか。


     協会新聞1998年6月号「曙] より