「私の主張」 

「再度訴える「保険医よ!萎縮するなかれ」

   今回の診療報酬改定では、史上初のマイナス改定となり診療科によって差はあるものの6〜14%の減額となっている。医業収入(診療報酬)から従業員給与や医薬品費等の諸経費(医業費用)を引いた医業収支差額をみると、診療所で平均約11%減、一般病院では58%もの減少との試算がでていて(日医総研)、経営に大きな影響がでる事は必至である。

   いまのままの国策に盲従していけば、医業経営が今後も医業は壊滅的に成っていく事は必至であるが、問題はそれだけではない。国民の医療費負担は徐々に、真綿首をしめる如く増大し、その矛先は本当に向けられるべき国策にではなく、弱り果てた医療機関に突き刺さってくるであろう。

   年間30兆円といわれる国民医療費を保険料と患者の自己負担のみで賄えれば問題ないが、実際はその3分の1が赤字のため国庫から25%の7.5兆円、地方自治体から8%の2.4兆円が支出されているのが実情である。

  この国民医療費の国庫負担をどの程度にするかは国策であるが、20年前と比べると国庫負担は5%下げられて30%から25%になっていて、額にして1兆5千億の減額である。その分、国民負担が増えたことになり、国民は国に対して怒らなければならないのにマスコミもその事を追求しない。

   イギリスは、国民医療費のほぼ全額を税金で賄っているし、スウェーデンなども税金で賄っているので税額が高いが、老後も病気になった時も出費が無いので、日本のように貯蓄にまわさないでも(日本の個人金融資産は1200兆円、有形資産残高にいたっては3114兆円)、貯金する必要もなく物を消費できるのである。

  国民一人あたりの医療費は、いままで何回も述べてきたように対GDP比でいえば世界で19番目でアメリカの半分ドイツの7割であり、実額でいってもスイスやアメリカの7割弱でフランスや北欧の国々と同額である。このように日本の医療は諸外国に比して安上がりになっているのは、医師の技術料の格安の故である。

   初診料、再診料、心エコー、総コレステロール検査料、心電図検査いづれをとってもアメリカの2割つまり8割引きの値段で、虫垂炎のオペ代にいたっては、ニューヨークの15%香港の25%なのである。このように技術料は格安なのに、薬価は諸外国の2倍からひどいのは6倍の高い公定価格で守られているので、外資系の製薬会社は日本をカモにして進出を図っているし、医療機器も諸外国の2.5倍から4倍もするので流通マージンが高くなるので競って日本に売り込んでくるわけである。

  日本の医療機関もいいかげんお人よしのカモである事をやめて、赤字体質を脱却して一人立ちするためにも、抜本的な改革を国に進言していかないと国民医療が崩壊していくであろう。介護保険も院外処方も医療費を押し上げただけで国民の負担を増やしただけだったことへの反省も含め、今の政治政策は国民のためにも根本的に改革する時にきている。

佐賀県保険医新聞2002年7月20日号「主張」より