主張 「史上初のマイナス改定と今後の行く末」

  日本に於ける医療福祉制度は、制度改定のたび毎に医療側に冷たい仕打ちを強いている。
今年4月からのマイナス改定は、表向きは2.7%マイナスとなっているが、医業収入でみると、診療所全体の平均で1327万円が1290万円でマイナス2.7%,100床の中小病院平均では、入院も合わせ8,770万円が8,281万円でマイナス5.57%と試算されている。ところが、歳出(医業費用)をみてみると医薬品購入費が5.7%減ったものの職員給与費減価償却費その他の歳出が同じであると仮定しても、医業収入から医業費用を引いた医業収支差額は、診療所全体平均で210万円が186万円でマイナス11%,病院にいたっては実にマイナス58%という恐ろしい実質収入の減少が試算されているのである(日本医事新報1月26日号とJapan Medicine 3月20日号より転載)。 
    小泉内閣のいう「痛み」は医療機関にとっては、特に中小病院にとっては酸素吸入を要する重症になる危険性が高いと言わざるをえない。大企業のように債権放棄してもらえるわけでもなく国立病院のように職員給与が国家公務員として国から支給されるわけでもない私立の医療機関の痛みがいかに甚大なものかを国民にも広く知らしめていかないと、医療が一般市民の手から遠いものとなり、直るものも直せず死を迎えてしまうことになるのであろうか。
この様な重大な事が、医療関係者のあずかり知らないところで、厚労省の審議官の裁量でトップダウンで決定され、医療機関と国民は、決定した後告知されて、「煮え湯」を飲まされ続けているのである。綺麗な高速道路や運動公園や国際会議場等がいくらできてもなんになろうか。政府が何は無くてもまずやるべき事は、国民の生きる権利を守ることであって、医療には20兆円公共事業には50兆円といわれる先進国には見られない逆転現象をもとに戻せば、医療費は全額国費でしても10兆円のおつりがくるというものだ。
   医療費改定に話をもどすと、4回目以降の再診料や院外処方せん料やリハビリ関係がかなり引き下げられているが、ともに算定される頻度が高いので医療機関へのダメージが大きいと試算されている。
厚労省の霜鳥課長は、「処方せん料を下げたのは、医薬分業が定着してきたので院外処方せん料を発行したほうが経営上有利になるような政策誘導をする必要がなくなったから」だというのである。介護保険については今度の改定ではいじらなかったが、介護関係の施設が増えてきたら、中間施設という本来の趣旨を守らせるべく長期入院者のしめだし、特老では全個室を要求してきているし、施設基準を厳しくして、不十分なところは減額していくことが方針とされているのである。
   介護保険が始まってやっと2年が経ったくらいだが介護保険財政は、多くの自治体でピンチを迎え、2001年度で426の市町村や広域連合が財政安定化基金から借金する予定で(総額約117億円)、この借金は三年毎に改定される65歳以上の人の保険料に上乗せされるわけで、高齢者は介護保険料を四苦八苦して払うことになるのである。
   介護保険は早晩破綻するのではと考えているのは私だけであろうか。

2002年3月31日  佐賀県保険医新聞 4月号 「主張」より