「水増し請求横行か」への抗議と訂正の申し入れ

7月16日付 毎日新聞

  「レセプトは……かなりの水増しがあると見られている」(7月13日・読売新聞)、「薬剤『205円ルール』は打ち出の小づち」(7月16日・毎日新聞)などと、医療機関の多くが不正請求を行っているかのような報道が相次いでいます。

  このうち、「薬剤費水増し横行か」と、7月16日付一面トップで報道した毎日新聞に対して、7月18日、協会は抗議と訂正の申し入れを行いました。
以下、申し入れ文を掲載します。

    貴紙7月16日付け一面の「水増し請求横行か」の記事について、事実無根の内容であり、厳しく抗議するとともに、訂正記事の掲載を求める。

    記事は、「205円ルール」のもとで「数十円の薬剤しか出していないのに上限まで請求するケースが少なくないとみられる」と断定している。しかし、その根拠は「複数の医療関係者によると」と、何ら客観性がない。犯罪である水増し請求を少なくない医療機関が行っているような記事には、厳しく抗議する。
不正請求で処分を受けた医師を証言させているが、犯罪者が他人を巻き添えにすることはよく耳にする。「悪いのは俺だけじゃない、あいつもだ」と自分への非難を他人に分散しようとする時、簡単に迎合して根拠もなく一面トップに掲載することは、報道機関としての見識を疑わざるを得ない。
厳しく抗議し訂正記事の掲載を求めるとともに、いわゆる「205円ルール」について以下に若干言及しておく。

    記事は、「205円ルール」=「不正請求」=「医療費増大」などとの誤解を受けやすい表現をしているが、事実を正確に掴む必要がある。一言で「205円ルール」」と言うが、その内容は大きくいって二つある。

1.外来薬剤一部負担金がかからない。
    97年から「205円ルール」を適用した請求が増加している理由は、同年9月から薬剤の種類数に応じた新たな「外来薬剤一部負担金」が導入され、それに対して医療機関が患者負担の軽減のために処方を変更したことが大きい。つまり外来薬剤一部負担金では、2〜3種類の内服薬を処方した場合は一日分につき30円を、4〜5種類では一日分につき60円等を、2割や3割の自己負担とは別に徴収しなくてはならない。しかし、複数の内服薬を処方しても、一日分の薬価が205円以下の場合は、薬剤負担はゼロとなる(205円ルールその1)。したがって、医療機関は一日分の薬剤費が205円以下となるように、ジェネリック医薬品に切り換えるなどの措置を取ったわけだ。

2.レセプトに薬剤名を書かなくて良い。
    1種類で205円以下の薬剤を処方した場合、レセプトに薬剤名を記載しないで良い(205円ルールその2)。手書きで保険請求している医療機関にとっては、薬剤名を全て記載することは事務量の増加となる。一方、電算化した医師の中には「全部を記載して良い」という意見もある。しかしその意見も保険の審査が改善されることを前提としている。薬の能書を外れた処方をすると「適応外」として減点され保険から支払われないことが多い。能書は製薬会社の都合に左右されることが多く、能書と医学常識は必ずしも一致しない。それどころか、能書通りに処方しても減点されることも少なくない。レセプトの「薬剤名省略」と「保険審査の改善」は切り離しては議論できない。  以 上