「総合規制改革会 議」案に物申す


    小泉内閣の言う「聖域なき構造改革」の内で最も力を入れているのが「財政構造改革」であり、その中での主目的は「医療および社会保障制度の改革」である。公共事業改革と地方財政改革がそれに続いている。

    「総合規制改革会議の中間とりまとめ」の報告書を読むと、5月11日に第一回の会議が持たれ7月24日の第6回審議で決定というスピード審議である。
その会議の構成メンバーを見てびっくりしたのは、15名の中に医療関係者が1人としていない事だ。会社のオーナー10名、法学部教授1名、環境学教授2名、商学部教授1名、社団法人理事長1名である。

    医療関係者を入れれば、「医療費を削ることのみを目的」とした会議の主旨に沿った答申が出せないとでも考えたのであろう。答申の結論が見え見えの会議などは、金と時間のムダだ。
ところで、審議の内容の中味は、医療福祉関係が約五割を占め、労働・教育・環境・都市再生が各々一五%ずつのページ占拠率である事を勘案すれば、この改革会議そのものが、財界人から見た医療費抑制案の作成であって、ある意味では増加しても当然な範囲の老人医療費や福祉の増加ですら、まるで「悪者」扱いになっているのは許せない。  

    改革会議の具体的内容の要旨は、7月25日付の各紙に掲載されている通りで、医療制度の根幹を変革する内容を含んでいるのに、欠席裁判のごとく、医療関係者の意見陳述の機会の全く無い場での答申作成は如何なものか。

    最も人間的な消費である医療福祉費が、本当はかなり強力な地域経済の活力源である事に気付いた官僚が今までほとんどいなかったのは、病める国民にとって不幸な事であった。
財政抑制を訴える財務省官僚に同調して医療費の増加を抑えるのに必死だった厚労省官僚の存在意義はあったのであろうか。

    国内総生産(GDP)に占める医療費は、先進国の中で12番目と低いのに世界一の長寿国になし得たことは、今までの皆保険制度と安い医療費(逆内外価格差)と一線で奮闘している医師・歯科医師の努力の賜であって、これ以上その比率において、医療福祉関係費を削るのはまかりならない。肉体的弱者を見殺しするつもりなのであろうか。決して経済の視点からのみで医療を語ってはいけない。

佐賀県保険医新聞 2001年8月号  「主張」より