「患者負担増を避けるという原点にたって今一度考えよう」
 我々実地医家の原点は、「患者負担増をいかにして少なくし、かつ良き医療を行うか」という事であるといっても過言ではない。
この観点から今一度「参照価格制度」と医薬分業」について考えてみたい。
まず「参照価格制度」が廃案になったのは「医師会」の猛反対による医師会の横暴のせいだとマスコミは批判している。
政府や薬業界は「参照価格制度の白紙撤回は残念だが、医師会が反対するからしかたない」というポーズをとっているが、一番この白紙撤回を喜んでいるのは、製薬業界である事を見逃してはならない。
建値制になってから以後、薬の蔵出し価格は上がり続け、どこのメーカーでも申し合わせたように全て薬価の93%から97%と高値安定で、全く競争がない。
10年前、ドイツで導入せれた時の分析では、参照価格がジェネリック価格近くに設定されたため後発品の薬価は2%上昇したが先発品は、なんと21%も薬価が下降し、年間10億ドイツマルクのコスト減になり又、メーカー間の競争が推進された。
日本の様に長期収載品でも、同効同薬剤の先発品と後発品の間に2.5〜3倍の価格の差がある国では、ドイツでの数倍の医療費削減効果が生じる。
何故かといえば、先発メーカーは、薬効に余程の自信がないかぎり、自己負担のない後発品にシェアを奪われるから、価格を下げざるをえない。
つまり、「市場原理による低価格形成」がなされるという訳である。  
 次に、「医薬分業」についていえば、分業で、かなりの患者負担の増加と莫大な医療費の無駄使いだという現実を認識して欲しい。
たとえば、・ノルバスク5mg 1錠 1хアサ ・デパス1mg 1 хねる前 ・アローゼン1包 1хで14日分という、 よくある処方の場合、薬剤費は14日分で1,912円で、院内処方した場合の内服調剤報酬は70円加算されるのみである。
同じ薬剤が院外薬局でだされると、一回で最低3,110円の調剤手数料が必要で、月二回の調剤とすれば、院内の場合140円ですんだものが、6,220円となる。
院内の処方料は370円で、院外処方の時の処方せん発行料は810円だからこの差の440円の二回分880円もこれに上乗せされるので結局、1,912円の薬剤のために院内と院外では、月に6,960円も高くなり、患者負担も国保で月2,090円もの出費増となる。
医薬分業率が2割を少し超えただけなのに調剤報酬は全国で1兆4千億円となっている。
分業が8割となれば調剤報酬は5兆円を超える訳で、院外処方だけのために莫大な無駄使いは許されない。
薬価差益が無くなった今、損を覚悟であえて、患者負担をできる限り減らすべく院内処方を固守し奮闘している開業医がいることを知って欲しいものである。

     1999年6月27日