11月下旬はどの新聞も医療保険審議会のだした建議書の内容の紹介と解説の記事であふれている。
詳細は商業紙に譲るとして主な5点を箇条書きにすれば・保険本人の2割負担・老人の1〜2割定率負担・薬剤費を3〜5割自己負担させる・政府管掌健保の保険料率を8.2%から8.5%程度に引き上げる・医師数、病床数の削減に着手する、となる。

  国民医療費が年間27兆円(うち保険料14.6兆円で全体の57%,窓口患者負担3.3兆円で12%,公費8.4兆円で31%)であるが、このうち保険料と窓口負担をたした総計としての国民負担は国民医療費の70%にも達している訳で、公費の拠出割合が3割しかないのは先進国のなかでは日本は最低のレベルである。

  日医の糸氏副会長は、『患者の負担増は、国民が医療を平等に受けられなくなる恐れと疾病の重症化につながり容認できない』とし、健保から繰り入れる保険料率を引き上げるべきだとの意見を県医での講演会でされたが、健保側は、『医師会の反対は単に、負担増になれば患者が減るからだろう。
それより薬価差をなくして薬漬けをなくせばいい。絶対に保険料をあ げるな。』との意見であった。

  両者の意見はお互いに相手に責任と負担をなすりつけている様に思えてならない。
国民どうしがいがみ合ってもだめで、このさいはお互いに痛みを分かち合うとともに国に対して、抜本的な予算の洗い直しを早急に行わせなければならない。前年度実績にとらわれた予算配分をやめさせ、既得権の壁を完全にくずして毎年毎年予算を組み替えていくゼロベース式にしまた、ダブった仕事の部局を合併して人をへらしたりすれば、(国内総生産(GDP)550兆円のなかで医療費に対し公費は8兆円しか使っていない訳だから)国民に負担増を強いる必要はなくなる。

 毎年、年度末になると全国の国立機関で予算の余った分の消化が急がれ、道路工事がはじまったり高価な機械購入がされたりするのは、予算を使い切れないと翌年度の予算からその分が削減されるからだが、まったくの無駄としかいえない。
年度末に急いで使われる予算は、国立機関にいた頃をおもえば年間予算の少なくとも一割ぐらいはあったから、GDPになおせば50兆円程にはなる計算だ。
それに国家予算で はじきだす公共工事の建設費等は、さきの福祉施設の工事丸投げでもあきらかになったように実費と差がある訳で、落札させたあとで調整して多かった分は返却させれば、莫大な金が、医療福祉等国民が一番望んでいる事業にまわせるわけである。

 最後にNHKTVであった淡路島の五色町の場合を言えば、町の予算の一部の20億なにがしを使うにあたり、議会は港湾工事を主張したが、町長は、『港湾工事は業者とその社員等80名に満たない人しか恩恵に浴さないが、特老と老健施設なら建設業者のみならず、老人2500名ほどが恩恵をうける』として議会を押し切ったとの事、首長はかくあるべきだと敬服した次第でした。

             協会新聞 1996年12月号掲載