健康ガイド




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肝臓

肝臓は別名「沈黙の臓器」ともいわれています。
世の中には、話好きの人もいれば寡黙な人もい
るように私たちの臓器にも、心臓や胃腸のように少し調子が悪いと、
「苦しい・痛い」などと症状を
起こすものもありますが、肝臓はよほどのことがない限り悲鳴をあげたりはしません。
おとなしくて
働き者です。


肝臓とは、どんな臓器でしょう?                      

肝臓
  • 位 置 
上腹部のやや右寄り、ちょうど右乳房の下あたりに位置します。
正常な肝臓は、ほとんどが肋骨や胸骨に被われているので、
外側から触れることは、ありません。
  • 大きさ 
重さは約1Kg、体の中では最も大きくて重い臓器です。
(心臓は約250g、膵臓は約100gです。
  • 血液量 
他の臓器に比べて血液量がたいへん豊富です。
心臓から送り出される全血液量の1/5、毎分1.5L
の血液が肝臓に流れ込んでいます。
ですから肝臓は血液をたっぷり含んだ「スポンジ」
にたとえられます。

肝臓の働き =肝臓は巨大な化学工場です=                             

肝臓は2500億個もの細胞からできています。そしてその細胞のそれぞれが超近代的工場です。
肝臓は500種類以上の、様々な働きを行っていますが、最も重要な働きは次の3つです。

分解 体に必要な蛋白質の合成と分解を行う。
貯蔵 ブドウ糖や脂質の代謝と貯蔵を行う。
解毒と排泄  アルコールや薬物など身体にとって
   有害な物質の解毒と排泄を行う。

肝臓が悪くなる原因                                   

原因グラフ 原因は、60%以上がウィルス
によるものです。
肝炎を起こすウィルスには、A型、
B型、C型、そして日本では流行
の報告がないE型等があります。
残り30%がアルコール、つまり
過度の飲酒によるものと考えられて
います。他の原因としては薬物、自
己免疫等によるものです。

肝臓からの注意信号                                  

人
 身体が疲れる、
     調子がおかしい
一晩寝ても疲れが取れず、症状が何日も持続する。
 食欲がない、
     吐き気がする
通常、病気に罹ると食欲がない、食べたくないと
いった症状を伴う事が多いのですが、急性肝炎の
初期は食欲不振、吐き気が特に強く現われます。
 お腹が張る 肝臓で作られる消化液(胆汁)の量が減少し脂肪
の消化がうまくいかなくなり、腸内にガスが充満
するためです。
 右上腹部が重苦しい、
     鈍痛がある
肝臓病で痛みを伴うことはさほど多くありません
が肝臓が腫れたりすると右上腹部に鈍痛、重圧感
が起こります。
 酒や油物に弱くなる 肝臓が悪いとアルコールの処理能力が低下しアル
コールが血液中から消えににくくなるとともに、
アルコールが分解して生じるアセトアルデヒドを
解毒する働きも低下します。このために少量の酒
で酔ったり、二日酔いをするようになります。

肝臓の検査                                           

血 液 検 査

血液検査
血清ビリルビン 胆汁色素で黄疸の原因です
ビリルビンが増えている場合は、急性肝炎や慢性肝炎、肝硬変の
症状が進行していることが疑われます。
血清蛋白 血液中の蛋白質は、大きく分けるとアルブミンとグロブリンに分けら
れます。アルブミンは肝細胞だけで作られ、肝臓の働きが悪くなる
と、血液中のアルブミンの量が低下してきます。
これに対して、グロブリン、特にガンマーグロブリンは肝臓病が慢
性化すると血液中に増加します。
コレステロール コレステロールは食べ物から採っているように思われがちですが、
実際には肝臓で作られる方がはるかに多いのです。そのために肝
臓の働きが悪くなると血液中のコレステロールはどんどん低下しま
す。
コリンエステラーゼ コリンエステラーゼという酵素はアルブミンが低下すると同時に、減
少することが知られています。しかし肝硬変の時には逆に上昇しま
す。
GOT,GPT 共に肝細胞の中に含まれる酵素ですが、肝炎の時にはこの両酵素
が肝細胞から漏れ出し、敏感に血液中に増えてきます。このために
肝炎などで肝細胞が破壊された時の重要な指標となります。
正常値はと゜ちらも40IU位ですが、急性肝炎になるとこの数値が3
〜4桁まで上昇することがあります。この場合は、GOTよりGPTが高
くなるのが一般的です。
γ−GPT この酵素は長期に酒を飲み続けていると、肝臓内や血液中に増え
てきます。特にアルコール性の脂肪肝の場合には高値を示しますが
逆に肝硬変では案外低値を示すこともあります。飲酒習が無くこの値
が高い場合は胆道系の病気(胆石や胆嚢炎)の、慢性肝炎の進行
した状態、薬物による肝障害などが疑われます。
肝炎ウィルスマ−カ−
  •  HBs抗原
  •  HCV抗原
慢性肝炎、肝硬変の起因ウイルスの検査です。

 B型肝炎ウイルスに感染していることを意味しています。
 C型肝炎ウイルスに感染していることを意味しています。
 ともに陽性の場合はさらに詳しい検査をする必要があります。

B型肝炎ウィルスの構造
構造
nmとは大きさの単位で10億分の1mです。


エコー
エコー写真
           超音波写真

この検査は、通称エコーと呼ばれています。体外から超音波を発射し、その音波が
体内の色々な臓器に反射して戻ってくるところを映像処理して映し出す検査法です
この検査の利点は、肝臓の形や表面の性質、肝内の血管や胆管の状況がよく診断
できることです。このことにより、1cm以下の肝臓癌や腫瘍の発見に大きな威力を発
揮します。



CT
CT写真
 CTによる腹部の横割り写真

一般にはCTスキャンと呼ばれています。X線で肝臓を1あるいは0.5cm間隔で輪
切りにし、コンピュータ処理して映像に映し出す検査法です。




CT写真
   MRIによる人体の縦割り写真

MRIはCTスキャンと同じように身体を断層撮影したものをコンピュータ処理しこれを映像に映し
出す検査法ですが、CTと異なり、横の輪切りの映像だけでなく縦の方向に輪切りにした画像も
得られる利点があります。

肝臓病の予防                                         

1960年頃からアルコールの消費量は伸び続け、
それに伴って肝臓の病気も増加傾向を示してい
ます。特に我が国では少ないと言われたアルコー
ル性肝硬変の死亡者は、全肝硬変による死亡者
の3割をも占めるようになってきました。
それではどれくらいの量を飲めば肝硬変になるの
でしょうか。これは個人差が大きく、いちがいには
言えませんが、1日に日本酒で5合以上、週に5
日以上で10年間以上飲んでいると肝硬変になる
率が非常に高くなります。
古来、酒は百薬の長と言われ、適量のアルコール
は必ずしも害ばかりではありません。
適量は1日1.5合以下、週5日以下です。

脂肪肝                                                 

飲みすぎ
脂肪肝とは、肝細胞の中に脂肪特に、中性脂肪が多量にたまった状態です。
正常な場合でも肝細胞の中には脂肪が含まれていますが、その量は肝臓全体
の5%以下でこれが10%以上を超すと脂肪肝といわれる状態になります。
最近40歳、50歳代に脂肪肝が増えていますが原因としてはアルコールの飲み
すぎ、栄養の取りすぎ、糖尿病などがあげられます。一番多いのはアルコー
ルの飲みすぎから肝細胞での脂肪酸の酸化分解能力が低下して、中性脂肪が
溜まるためです。健康な成人を対象にした研究では日本酒に換算して5合↑/日
を一週間飲み続けると立派な脂肪肝になります一般的には3合↑/日飲み続ける
と脂肪肝になる確率が高くなります。ひどくなると肝臓全体が腫れますが、肝
硬変などの重大な肝障害まで進むことはほとんどありません。しかし肝臓まで
脂肪が蓄積した状態は、高脂血症、糖尿病などの生活習慣病が起こりやすい体
質になったシグナルといえます。きちんと治療すれば脂肪肝ほど治る病気はあ
りません。御自身の生活習慣を改善することが治療なのです。



肝臓の病気は働き盛りの40〜50歳代に多いというやっかいな性質を持っています。
近年の肝臓学の進歩は、その治療法に対してめざましいものがありますが、なんといっても
手後れにならないためには、予防と早期発見がなによも大切です。