筑後川たより No.8      H11.10.10

   市政くるめ NO,998の「埋め立て地」関連記事の検証

 日中の暑さはともかく、朝夕はめっきり涼しさを増してまいりました。皆様

にはますますご活躍のこととぞんじます。

 私の住んでいる所ではこの連休を利用して、いっせいに稲刈りが始まりまし

た。ここから遙にみえる耳納連山の山懐、杉谷の棚田にも豊かな実りの秋が訪

れるはずでしたけれど、数年前に市が埋め立て予定地として買い上げてから、

もうすっかり荒れ果ててしまいました。

 夏休みも残り少なくなった8月23日、久留米市長はまた新たな一手を打ち

出しました。

「17種分別で埋め立て量の減少が見込めスケールダウンできる状態に変化し

た」として、埋め立て予定地(高良内町杉谷地区)の規模を半分に縮小し、そ

のまた半分を第一処分場として来年度に着工するというものです。

その新計画とは、解除の許可がおりない保安林をさけて谷の中をL字型擁壁で

くるりと仕切り、そこをまず5年間の処分場とするのだそうです。土木建築家

によるとL字型擁壁というのはよほど地盤のしっかりした所でないと無理で、

杉谷のような所に適した工法ではないということです。

(このあたりは古生代の非常にもろい地層で、水源地から流れ出た水は高良内

川を経て筑後川にある水道水の取水口の上流に流れ込むだけでなく、伏流水と

しても筑後平野に広がってゆく、しかも近くには新幹線も避けて通る活断層ま

で有ります、そのような土地だからこそ私たちはダイオキシンなどの猛毒を含

む一般ごみの処分場にしてはいけないと頑張っているのです。)

 市の思惑としてはまずそのような工事をしておき、次は擁壁が壊れそうだか

ら第二処分場を作るために保安林解除をしろ、と林野庁に迫る予定なのでしょ

う。建設差し止めの裁判の一審判決さえ出ておりませんのに、裁判所も林野庁

もなめられたものです。

10月1日付けの「市政くるめ」の見開きには例の如く、埋め立て地に関する

市の一方的な説明が載っておりましたので、私なりの反論をしたいと思いま

す。

1、 「計画を批判していた人たちを含む34人の委員からなるごみ問題協議

会が、具体的な建設場所は市の判断に委ねた。」とありますが、その批判

していた委員というのは5人で、その委員会というのは時々全体会は有るもの

の、普段は施設担当委員とごみ減量担当委員とに分かれることになり、その方

達は自分たちが推した白石市長のもと、もう杉谷地区が埋め立て地になること

はあるまいという安心も有ったのでしょう、処分場をどこに造るにせよ、より

小さくより安全な施設を造る必要がある、そのためにはごみを減らさなくて

は、 ということで、2人はごみ減量部会へ、3人が施設部会に入りました。

 施設部会には市の職員や「埋め立て地は排水のために傾斜地の有る山間でな

ければならない」と言い張る市会議員も含まれていたそうですが、とにかくそ

の部会では埋め立て地としてはどのような場所が適当か、という検討をするば

かりで具体的な候補地の名前さえ出ないまま、平成7年11月 市は「場所の

決定には杉谷地区を含め、市の方で決定する」という中間報告を発表をしまし

た、それに抗議はしたものの委員ですら場所の決定には加えてもらえない雰囲

気のまま終わってしまったということです

 結局それが最後の委員会となり、翌平成8年2月、市は協議会が決定した事

として「杉谷地区に埋め立て地を建設する」と発表。反対派の市民は思いもよ

らぬ成り行きに愕然としました。

 自分たちが委員として入っていながら!と責任を感じた委員たちは、その発

表のあと市職員6人と協議会の中心的な委員5人の計11人が市内の料亭で打

ち上げ会?をした事実をつかみ、「その時に使われた税金88,298円は不

当な出費ではなかったか」として裁判を起こしました。

 勿論、ご馳走を食べそこなったからではなく、「なぜ一部の委員だけでその

ような事をする必要があったのか、杉谷は協議会の決定と言うが、その決定は

もとより、協議会そのものからして全てまやかしではなかったのか」と言いた

かったからです。この裁判は平成10年6月、出席者の名前の公表を恐れたた

めか、市が飲食の事実をみとめ、飲食代も返りましたので、市は以後気をつけ

るということで和解となりました。

(当時、実は杉谷地区の外に5箇所の候補地が有ったにもかかわらず、それら

は何の調査もされることなく杉谷に決定したことが情報公開により判明してい

ます。)

 また、「市は協議会の提言を踏まえ埋め立て期間15年単位で」とあります

が、これは協議会が提言したからではなく法律の改定で15年以上使用するよ

うな大型処分場を造ってはならない、となったからです。(尤も一度造ってし

まえば何年使っても目こぼしのようです)

2、 「今日までの経過」の表中、

(1) [平成3年6月、環境アセスメント開始]とありますが、これは廃棄

物処理法の改正により平成10年7月に急遽行われた「杉谷地区のアセスメン

トの報告書(7年もまえのもの)の縦覧」によると、工事に重要な影響を与え

る水量に関しての調査をしたのは8月から翌年の3月迄の間で、なぜか雨量の

多い時期は外れており問題となりました。また、この地域に存在しない植物が

生えていることになっていたりと随分ずさんなものでした。(ちなみに、ここ

でのアセスメントというのは単なる現況調査で、他のなにかと比較検討したも

のではありません。)

(2) 「高良内住民や全市民を対象とした説明会や意見や要望を聞く会を六

十数回実施」とありますが、現在までに高良内町での地元住民対象は10回以

下、全市民対象が2回(地元住民の外は殆どが市職員などの動員)で、あとは

市の職員が地元民の玄関先で立ち話して帰ったのも一回と数えているのだろ

う、というのが地元の人たちの話です。

(3) 「反対する人たちが九年五月に建設工事さしとめなど六件の裁判を起

こす」とありますが(別表参照)、このうち一件は上記のように市が事実を認

めて解決。これらはみな「あきらかに」と思われる証拠があればこそ市民が起

こした裁判で、市は苦戦をしております。勝ち目がないからこそ今回の様な発

表となり、既成事実を作って目的達成をしようとしているようです。必要とあ

れば裁判はまだ起こす準備があるそうです。なお付け加えますと六件のうち三

件は地元民以外の市民たちが起こしているもので、責任をはっきりさせるため

に、市長や助役や市の管理職の数人の個人が相手です。

3、 「反対の人たちは、安全の技術施行面というより杉谷地区が水源地にあ

たるという理由から反対のようです」とありますが、杉谷という水源地は大自

然の循環によって作り出された水が山に降り注いでさらに浄化され集められて

流れ出てくるところ、これほど優れた施設は人間の力でできるものではない

し、このような所を処分場にするというのは水道の蛇口に毒をしかけるような

ものです。しかも前記のように活断層が有ったり地盤の弱い所ですから市が予

定している管理型の施設で、いくらゴムシートや不透水性改良地盤とやらを厚

くしてもお金をかけるだけ無駄な危険な場所なのです。ちなみに農業用水の溜

め池を作る事の多い農水省では水の全く漏らない溜め池は無い作れない、とさ

え言われるそうです。

 また、市は11億円をかけて新しく造る施設で危険なごみを無害化すると

いっていますが、せいぜいダイオキシン濃度の最も高い飛灰を顆粒状にした

り、重金属類を溶け出しにくくする程度で、環境ホルモンなど新たな猛毒物質

の対策にはならないものです。

 市は当面のごみ問題を言い立てて、今作ろうとしている施設がその性質上、

永久に壊れず有害物も流れ出ないものでなければいけない、という大前提から

故意に市民の目をそらそうとしています。

 とりあえず5年間の処分場でいいのなら、なにも杉谷地区にこだわる事はあ

りません。

 候補地は5箇所も有ったのですから、すぐアセスメントをして比較検討を

し、危なくないごみ、すこし危ないごみ、とても危険なごみ、とそれぞれ適し

た場所に分別して処分するための、小さくて本当に安全な施設を造ればよいの

です。

 先日、茨城県の安全だと言い聞かされてきた核燃料施設で、起こる筈のない

臨界事故が起こり多くの人間の命を脅かしました。日本ではもう忘れてしまっ

た人もいるかもしれませんが、当時報道されたように、あの臨界事故は世界中

の人たちを心配させ、ドイツではただちに対策本部がつくられた程の重大事故

でした。

 「住民参加の安全監視体制を採り入れる」といっていますが、監視していて

も猛毒が流れ出したと気が付いた時、つまり万一の事が起こってからではもう

遅い。

 それは放射能も環境ホルモンの被害も同じ事です。環境ホルモンの場合すぐ

目に見える被害が出ないからもっとたちが悪いのです

 久留米市議会で、ある議員はなんと「筑後川の上流には既に沢山の処分場が

有る、今更杉谷地区に造っても構わない」といい放ちました。焼却灰が危険な

物だと知らずに造るのと、猛毒だと知っていながら水源地を汚すのとでは罪の

重さに雲泥の差があります。

 それは薬害エイズ事件と同じで、大きな犯罪です。現市議の中にはこの程度

の人が多い。

 筑後川の水を飲む人間として、すでに有る汚染源にはただちになんらかの対

策をうながすべきですのに、ことの重大さがお分かりでないようです。

 しかし今年の選挙では環境問題を掲げた、杉谷を守りたいという議員が一挙

に4人も当選しました。市も認めているように、ごみの減量も順調に進んでい

ます。これは市民がいかに杉谷を心配しているかの証拠でしょう。

 また、松本ゆいこ衆議院議員(民主党)にお願いして厚生省や環境庁などへ

の陳情に上京したいと思っています。

              1999、10,10

                筑後川の水源を守る会   福田万里子