筑後川たより No. 5

                             H10.9.1


 今年は四月の長雨に続いたこの豪雨型の梅雨に、杉谷地区近くの県道脇では

崖が大きく崩れかけ、大きなビニールシートで頭上高く覆われています。

杉谷地区は あちこちで岩が植林された杉の木や雑木に崩れかかり、立ち木を

押し倒して かろうじて止まっている様な所ですから、ここで 市のもくろみ通

り 土石流防止の保安林という国の指定を解除し、崖を削ってセメントの吹き

付けをして 1.5ミリのゴムシートを二重に被せてみても、そこが廃棄物で

一杯になる15年もの間 とても無事に済むとは思われません。

 ところで、市は 突然「市政くるめ」7/1号で 、廃棄物処理法の改定によ

り 「久留米市が設置する一般廃棄物処理施設に係わる生活環境影響調査結果

の縦覧などの手続きに関する条例」を6月市議会に於いて制定した、として

これがどういう意味を持つのかの説明も無く 7年前の杉谷地区のアセスメン

トの報告書の縦覧と意見書の提出を発表しました。

しかも これを無視して放っておくと、異議無し と見做されてしまうそうで

す。

 気が付くのが遅くて、7/22には ネットワーク、7/29には新婦人、

7/31には生命を守る会の方達が、ダイオキシンが問題になってもいなかっ

た7年も前の調査結果を公開することで 条例の形だけを整えようとしている

のではないか、などと 市環境部へ抗議に行かれました。

 私も何度か縦覧に行きましたが、調査したのは8月から翌年の3月までの間

で 雨水量の多い時期は外れており、このような調査をもとに設計された処分

場であれば 私たちの心配は即 的中してしまうに違い有りません。 さらに

 処理場内に降った雨水、つまり 埋め立てられたものを通ってきた汚水は現

存の南部下水処理場で処理される となっていますが、ここでダイオキシンそ

の他 重金属類が無毒化される訳ではなく、単に滅菌された水と汚泥に分けら

れて 筑後川に流されたり肥料として使われる訳ですから、いずれ 毒物は魚介

類や作物、ミルクなどとなって私たちの処へかえってきます。このことを質す

と、「安全な施設に安全な物をいれる」ことになっているからこれでいいの

だ、という あきれた答え*。しかし、ここに埋め立てられるのは 年間7万ト

ンのごみの内の 2万トン、15年では実に30万トンがダイオキシンを含む

焼却灰なのです。それなのに 万が一の場合の危機管理など どこにもありませ

ん。

 黙っていたら 貴重な水源地がダイオキシンなど猛毒の汚染源になってしま

いますので、先日、ネットワークの方たちと4600余枚の意見書を集めて市

に提出しました。

 今後も追加して出していきたいと思いますので よかったらぜひご協力をお

願いいたします。   できますならコピーをして ご家族や御知り合いの分

もまとめて送って頂けますと幸いです。


* 送り先

(〒 830−0062) 久留米市荒木町白口374−3 福田万里子

切手やコピー代がかかりますが どうかカンパと思ってご協力をお願いいたし

ます。



 それにしても、埋め立てられる物が物 場所が場所だけに 15年間だけ無

事であればよい、というものでもなく、万一 ダイオキシンなどが流れ出ると

いう事態になれば、これまた多くの公共事業 同様 その補修などの維持費や流

れ出たダイオキシンなど有害物質の始末、更に それらによって引き起こされ

る公害の補償などへの 際限の無い税金の投入に、健康だけでなく金銭の面で

も 市民の生活が圧迫されることになります。

 大金を投じて ごみをまとめて埋め立てるという時代遅れの欠陥施設を造り

取り返しのつかぬことになるまえに、なんとかしなくてはなりません。

川の水が汚染されるということは 汚染源より川下の動植物や海の魚介類まで

すべて汚染される ということで、汚染源が上流にあるほど汚染される範囲は

広がってしまいます。 川の上流、それも水源地に 処分場を造ろうというのが

非常識なのです。

 

 すでに 岡山県では県知事が多数の学者達の意見をいれて、今後 水源地には

処分場は造らないと表明しているのですが、福岡県ではいまだに水源地や上水

用ダムの近くに処分場ができる等の話が後を絶ちません。 久留米市の当局は

他の方法を考えるゆとりも無く、国とけんかをしても保安林解除をして着工す

ると息巻いていますし 市民の大半は それを後押しするかのように ただ静観

するだけです、なんらかの形で反対の意思表示をしないと賛成したとみなさ

れ、取り返しのつかないことになってしまいますのに。

 政府はすでに、環境問題をこのままにしておけば 日本の人口は百年後には

半減、千年後には0、という予想を出しているそうです (そんなゆっくりし

たものではないという人もいます)。これは日本だけのことではない、全地球

的なものでしょう。佐渡のトキと同じく “そして誰も居なくなる” のです。

誰も居なくなるまでの私たちの子孫はどのような苦しみを味わうのでしょう

か。

 政府が環境を守るために 遅れ馳せながらダイオキシンなどの基準値を上げ

て 笛を吹いても、地方の行政がこれではどうにもなりません。

 ところで ごみの処理ですが、やはり第一には ごみを減らすこと、17分別

で確実にごみは減ったそうですから これをもっと徹底する、そして 物を買い

過ぎないこと。 トレーは勿論、生ごみも分別収集して まとめて乾燥した

り堆肥化して 田畑の土作りや公園、山林などで使ってもらったらいいと思い

ます。これもいろいろな良い方法があるようです。

 また、年間7万トンの内の 残り5万トンは電化製品などの粗大ごみに不燃

ごみ、建設廃材なのだそうです。市民のごみと言われて すっかり恐縮してい

ましたが 殆んどが事業所のごみだった訳で、そのためにあの杉谷地区の広大

な土地が必要だった訳です。

 ならば 粗大ごみや建設廃材の木材部分は粉砕して少量化し(最近の建築材

は合板が多く 燃やすとダイオキシンが出るそうです)、 建設廃材のガレキの

部分はやはり粉砕して分別すれば、もう一度 建設材料として あるいは道路工

事の敷石などに再利用できるのではないでしょうか。これなど 市内の採石業

者にノウハウが有りそうですし、してくれる所が無ければ新しく造ればよい。

電化製品もプラスチックの外枠など 簡単に外せる部分だけでも外して粉砕・

少量化したうえで分別しておく。

 幸か不幸か この大型不況で倒産した工場も多く、ごみ再利用のためのリサ

イクル工場や中間処理施設のための用地と人手は揃っています。 雇用促進の

ためにも 市はこのようなところを積極的に応援して 様々な 公害を出さない

立派なリサイクル工場に育てて欲しいものです。

 上記のように 建設廃材等なども すべて分別収集の後、徹底した再利用をし

て ごみの量を減らし、まだ技術が追いつかなくて すぐリサイクル出来ない焼

却灰その他は それぞれ 分別、少量化のうえ 特に危険な物は遮断型処分場

(漏水の無い地下壕型) 疑問の残る物は管理型処分場 心配の無い物は炭坑跡

の埋め戻しなどと、市民の身近に出来ても心配のない 安全で小さな分別型の

処分場を幾つか造る、など みんなが知恵をしぼり 行動に移ればごみ問題は解

決です。きちんと分別して取って置けば、将来 資源として活用できます。北

九州市や大牟田市には立派な処理施設ができていると聞きますので そちらを

検討してみるのもいいし、なにも 久留米市唯一の水源地であり貴重な自然を

広大に破壊してしまうことはありません。

 まどろっこしいようですが これが 実現可能で 後顧の憂いを残さない、久

留米市民のために もっとも良い方法ではないかと思います。不況でごみの量

も減っていますから 充分 間に合います。

何度も申しますが、今 久留米市に必要なのは 考えを切り替える為の勇気だけ

です。

 みんな自然と子孫を守りたいのです、これ以上の税金の無駄遣いさえ止めて

もらえば、これまでの出費は仕方が無いと思います。オンブズマンの方々も

きっと納得してくださるでしょう。

 

 近年 日本のあちこちで漁師さんたちが“山に木を植えよう”という運動を

しておられるそうです。山の緑が海の魚介類を育んでいることが分かったから

です。

 太陽によって海水が蒸発し 雨となって山間に降り注ぐ、その水は木々を養

い 更に浄化されつつ谷に集められて 川となり田畑を潤して また海に流れて

海の生物を養う。

 この素晴らしい自然の循環はすべての星に有るものではありません。海と山

と山の緑、それに太陽が加わって 真水が生まれ 地球上すべての生き物が生

かされているのです。この四つのうちどれが欠けても 私たちは生きてゆけま

せん。そのような意味で山間地はすべて水源地として大切に守っていかなけれ

ばならないと思います。 人間の作ったごみで谷を埋め立てるなどもっての外

で、産業廃棄物のことも企業や処理業者まかせにせず もっと みんなで考える

必要があると思います。

 行政をつくっているのも市民、それを正しく動かすのも市民の義務であり権

利です。

 緑ゆたかな自然を子孫に残すために、私たちの足元から 環境を守るための

行動を起こしましょう。目的がかなう日まで 今後ともどうぞ 強力なご支援を

お願いいたします。


1998 .9 .1

筑後川の水源を守る会 福田万里子