筑後川たより  No.4

                           H10.2.20

高良内町杉谷地区の水源地を 人類史上最強の猛毒と言われるダイオキシンを

含む久留米市の焼却灰の処分場にするということは、「人間の生命にかかわること

だ」と知りつつ無視し続けた 薬害エイズや水俣病の始まりと同じことに気づき、この

ことを一人でも多くの方に知らせなければとやむにやまれぬ気持ちで「筑後川の水

源を守る会」を創り、白紙撤回の署名運動を始めたのは 昨年の4月半端でした。

 もっと上流の 甘木の白川水源地でも同じような問題が起きています。いま杉谷地

区の水源地を焼却灰の処分場にして汚したなら、今後 筑後川の上流に同じ問題

がいくつ起こっても、もう 久留米市民には反対する資格は無くなってしまいます。

しかも、焼却灰となるゴミを出した全久留米市民が 子孫の生命を縮める 加害者と

なります。みんなですれば 知らぬふりで良いという訳にはいきません。人間である

以上、子孫の生命にかかわる事は すべてに優先して考慮すべきではないでしょう

か。

橋田先生や河内先生はじめ 沢山の方々のご協力を得て、合計一万余名の署名

を集めることができました。結局、水源地の埋め立て地化の白紙撤回まではいか

なかったものの、あわや埋め立て工事着工か と思われた6月も過ぎ、9月も無事に

過ぎましたのは、6件の裁判等に加え、署名運動にご尽力下さいました皆様方の

お陰かと思い、「筑後川たより NO3」には 感謝とお礼の気持ちを込めて 経過報

告方々、私の見聞きしたことなど書かせて頂きました。

 現在 着工出来ないでいるのは 保安林解除が出来ていない為ですが、それが出

来れば殆ど自動的に厚生省の予算がおり 着工の運びとなるそうですので、なんと

か 保安林解除がなされないよう その署名運動を盛り上げねばと思っております。

また ご入会やお心づくしのカンパを有難うございました。通信費だけでも1回2万

円以上かかりますが、私の僅かなへそくりと主人のカンパに 二人の友人からの1万

5千円でやってきましたので、とても助かります。それと 大切なお金をカンパしてや

ろう、という皆様のお気持ちが何よりうれしくて、最も身軽であるらしい私が皆様の

代りにお役に立たねばと 思いを新たにしております。

 ところで その後 予定通り10/11に再度 上京し、生命を守る会の丸山会長さん

と共に 福岡県出身の衆議院議員で環境問題に熱心な松本ゆいこさん(民主党)

や 松本さんに紹介していただいた議員さんや厚生省、林野庁の方など9人程 お

訪ねしてきました。その際 松本さんが 「環境問題は人の命にかかわることですか

ら 党派を超えて 全ての人々がしっかり取り組まねばならないのです。」と強調され

たのが印象的でした。

帰ってから皆さんに資料を送らせてもらい、 また あちらからも様々な資料を送って

頂いております。

 東京では 3月に子供が生まれたばかりの長男の家に泊めてもらったのですが、

あどけない幼児の姿を見るにつけ この子らの将来を考えずにはいられませんでし

た。私が久留米で筑後川の水を守れば、きっと 東京でも どなたかが環境をよくす

るために頑張って下さると信じています。

 戦後、追いつき 追い越せと頑張ったおかげで日本の経済は大発展をしましたけ

れど、酸性雨にオゾン層破壊、温暖化にダイオキシン等など、アッという間に地球

上 特に日本の環境は他国に増して悪くなり、今の若い母親達はアトピ−や喘息の

発生に脅えながら子育てをしています。

経済の発展が悪いのではありませんが、プラスチック天国といわれる日本で(世界

中、日本ほど野放しにプラスチック類が作られているところは無いそうです)プラス

チック類を燃やすことによって はからずも作り出されてしまった猛毒のダイオキシ

ンは、たとえどんなに微量であっても 、それを含んだ水や土で育った動、植物に

蓄積され 更にそれを食べる人間の体内に蓄積されて ガンをつくったり、環境ホル

モンとして男性の精子を弱らせ、胎児を奇形にし、母乳や水に混じって、やっと無

事に生まれた子供たちの体にまで ガンを発生させるのです。

 ダイオキシンなどの化学物質による 上記のような被害に対しては現代の医学で

はどうしようもありません。 もし 杉谷地区の水源地がダイオキシンなどで汚染され

た場合、久留米市内だけでなく 福岡、佐賀両県の三百万以上の人がその水を飲

むことになりますし、筑後川の水に育まれた両県の農作物や家畜、有明海の海産

物はみな汚染されますから、筑後川の水を飲む飲まないにかかわらず久留米のゴ

ミから発生したダイオキシンが食べ物として 地元をはじめ全国にばら撒かれること

になります。そうして 皆がすっかり忘れた頃 じんわりと被害が出始めるのです。し

かも その加害者は焼却灰となるゴミをだしたすべての人々です。

 チェルノブイリの子供たちは今でも甲状腺の病気に苦しんでいますが。水源地の

ダイオキシン汚染は水俣病やチェルノブイリの放射能汚染と同じように、無差別に

広範囲の人々と子孫の生命を脅かす結果になるのです。井戸に毒を投げ込むよ

りもっと悪い。すでに魚には環境ホルモンの影響が出ています、それと同じ水を人

間も飲むのです。それでなくとも少子化の進んでいる日本の将来は一体どうなるの

でしょう。脅すつもりはありません、しかし 人の生命にかかわることですから 最悪の

場合も考えておく必要があります。環境破壊は武器のない戦争、と言えるかもしれ

ません。

すでに様々な環境汚染が進んでいるからこそ、新しい汚染源を造らないことが必

要です。ゴミと子孫の生命とを引き換えにする訳にはいきませんから、先ず水源地

を守り、同時にゴミをどうするか皆で考えましょう。

「うちでは 高価な浄水機を使っているし、科学も医学も進んでいるから大丈夫でし

ょう、それより隣で燃やしている簡易焼却炉の方が恐いんじゃないの?」 と言う人

があります。勿論 小型の簡易焼却炉で なんでも適当に燃やすのはとても危険で

すが プラスチック類を一切 燃やさなければすむ、それに対し 水源地を大量の焼

却灰で埋め立て 修復不可能な汚染源にすると 被害が広範囲に及び 取り返しが

つきません。

家庭用の浄水機ではダイオキシンなどの化学物質を完全に取り去ることはできま

せんし、また 何でもお金や科学の力で解決していると いつか人間は水槽の中の

熱帯魚のようになって、食料の補給が途絶えないよう、 ヒーターや酸素補給機が

壊れないよう また水槽が壊れないように 全てただ 天に 祈るしかない状態になっ

てしまいます。 それでいいのでしょうか?

過日 出席した或る会での話ですが、市の環境課の方によると、予定地に埋め立

てられる焼却灰は その中のダイオキシンの化学式を変えるような化学処理をし、

無害化して埋め立てるから全く心配ないとの説明でした。ダイオキシンの中のCL

(塩素)を2つほど他の物と入れ替えるのだそうです。そんなにた易く無害化できる

ものなら 厚生省が、世界中がこんなに大騒動することはないでしょうに。 焼却灰の

中にはまだ明らかになっていない、ダイオキシンよりさらに悪いものが含まれている

かもしれない というのが学者達の意見です。うっかり他のものに変えたりしたら 更

に毒性の強い物になつている可能性もある訳で、こんなに無責任な事はありませ

ん。

 猛毒とはいっても 水で薄まるから大丈夫、という人もいますが そうではない、25

m×50mのプールにほんの数滴落とした、それくらいでもう被害がでるというので

す。特に脂肪の中に蓄積し易く、それが母乳として出てくる。最も被害を受けるの

は乳幼児です。

ゴムシートも2重、3重にして(お金をかけて)立派な施設を造るから大丈夫というこ

とですが、メーカーは2年から長くても10年しか保証できない、と言っているのです

から その後は永遠に市が税金で、ということになります。全国の処分場でシートが

よく破れているそうです。

そもそも 杉谷地区のある耳納山系そのものが古生代の崩れやすい地層だそうで

、伏流水にもなり易く、処分場や、ダムのような建造物を造るには最も不適当な場

所なのです。

この様な処に 永遠に安全な処分場など造れる訳はありません。

12/7に、長年研究されてきた大川高校の木戸先生の案内で(久留米の自然を

守る会主催)耳納山の北側に有る 水縄活断層の露出部を見てきたばかりですが

、山が動いている証拠を目にして人間の営みの小ささ脆さを思わずにはいられま

せんでした。

杉谷はその活断層から数キロしか離れていません。そのような処に 埋め立て施設

を造るために 市は60億円、さらに工事をしたりゴミを運ぶ為の道路や近隣の迷惑

料などを加算すると 100億から120億円の税金を使うそうです。これだけのお金

が有れば、やりかたによってはゴミ処理の為の中間処理施設(リサイクル施設など)

が一式揃ってしまうのではないでしょうか。

 

 杉谷には国の指定による土石流防止のための保安林が有るのですが、市はそ

こと高良内財産区の他の市有地とを交換する という無茶なことをしてまで 埋め立

て地を造ろうとしているのです。他にも様々なおかしいことをしています。それで、

今 地元の人達が起こしている裁判が3件、他の市民が起こしている裁判が3件あり

ます。

裁判までして 税金の無駄使いをする、と言う人がいますが 自然を破壊し 生命を

脅かし 先々 管理や保証にどれだけ費用が嵩むかも分からない 120億円もの無

駄使い?をする事に比べれば、裁判の費用など安いものです。しかも、市民の起

こしている3件の裁判の相手は市では無く、責任をはっきりさせるために 市長や助

役や管理職の 個人の数人が相手です。

その 一つは「食料費」と呼んでいるものですが、これは後々「杉谷地区の埋め立て

地化は市民の総意で決めた」と言わせる基となった、市長の私的諮問機関「久留

米市ごみ問題協議会」が「杉谷地区を含め 埋め立て予定地の決定は市にまかせ

る」という決定をして、実質的に協議を終わったあと、その中の5人の委員(市民)と

6人の市の職員、計11人が税金88,298円を使って、料亭で呑みかつ食べたの

は 一体どういう事なのか、上記の決定にまやかしは無かったのか、というものです

。その後 他の5ヵ所の候補地は殆ど何の調査もすることなく 杉谷地区に決定して

います。

 
 では ゴミの方はどうすればよいか、これは極力 ゴミを減らすしかありません。

先ず第一に、物を買わない。プラスチック類をはじめとして、すぐ捨てるような物を

極力買わない。モデルチェンジのたびの買い替えなど もっての外、今 ある物を1

年でも2年でも長く使うようにすれば、そのうち メーカーも修理の効く物を造るよう

になりましょう。経済の発展も大事ですが それを今言っていたら、現代のツケをま

とめて 次の世代に先送りする事になります。子孫の繁栄無くしては 私たちの将来

も楽しいものでは有り得ません。

今、経済発展最優先の考え方から環境優先の考え方に 日本中の人が発想の

転換をしないと日本は大変な事になると思います。

一昔前までは 福祉では儲からん、というのが通説でした。しかし、良い悪いは別

として今では成長産業です。。転換は大変でしょうが 企業にも今度は環境関係で

頑張ってもらいましょう。

次はリユース、これは使い捨てのカン入りなどでなく ビールや酒の瓶のように何度

でも使える容器にはいった物をなるべく買い、使い回しをする。または 皆さんご存

知のリサイクル。再生紙や ペットボトルをトイレットペーパーや衣服などに作り替え

る、というのはもうよく知られていますが、三潴には発泡スチロールなどをガソリンな

どに油化する設備も出来ています。

生ごみは分けて集め EM菌を使って堆肥化し畑や公園、山林で使ってもらう。ま

た、ゴミを棒のように固めて燃料棒にし それを発電に使うという工場も北九州など

全国にすでに3個所できています。灰溶融炉を使えば焼却灰は更に少なくなる。

また、燃えない大型ゴミは破砕機にかけ 少量化する。酒粕や家畜の屎尿からメタ

ンガスを発生させてエネルギーとして使う。

このように 様々な方法が有りますから、その気になって みんなで研究し、いい中

間処理施設を幾つか造って 徹底して行えば ゴミは随分減るはずです。これは 私

どもが かつて無い 豊かで便利な時代を過ごしている代償であり、世界中の流れ

でもあります。大変ですが 努力するしかありません。しかし、それでもゴミはでます

。11/14 にあったシンポジウムでは5人のパネラーの方々が意見を述べて下さ

いましたが、その際 久大の河内先生によると、ドイツでは各地区 持ち回りで 最終

処分用の穴を3個ずつ造る、そして 処分せざるを得ないゴミも なるべく燃やさずに

、安全なゴミ、少し心配なゴミ、焼却灰のような危険なゴミと分けて入れるそうです。

勿論 危険物の穴は防水セメントなどで充分手当てをし 地下水や雨水が入らない

ようにした 天井のある遮断型です。市には他に5ヵ所の埋め立ての候補地も有る

ことですし、また あちこちに 市有地も持っているそうですから そのような処をゴミ

処分場として使ってから、公園なり 何なりにしたらいいというご意見でした。なにも

15年ももつような大きな処分場を造って自然を破壊し、子孫を危険に晒すことは

ないのです。目立たない処に造って 産業廃棄物をも そっと捨てさせようとの腹積

りなのでしょうか。

そのような事より、産業廃棄物も市民と全く無関係では無いのですから、民間だけ

にまかせず、市はもっと 県や国に働きかけて、前向きに解決していくことが必要だ

と思います。

11/1−2 宮崎県の小林市で 住民投票の行われる 約2週間前、産業廃棄物処

理施設反対の全国集会がありました。岐阜県御嵩町や三重県、岡山県からの参

加者も交え 九州各地から沢山の方達が集まり、それぞれの報告がありましたが そ

の中には たった2人で稼動中のショベルカーに取り付き、それが運動の始まりで

とうとう工事を中止させた

という話もありました。体を張ってまで阻止をする、好きでやるわけではない やるに

はそれなりの理由があるのです。久留米もそうですが、なぜ 住民がここまでしなく

てはいけないのか、その問題箇所の多さはこの集会に集まっただけでも驚くほど

で、今まで廃棄物に 殆どなんの対策もとらなかった政府の無策を思わずにはいら

れませんでした。とても町や市の行政だけで片付く問題ではありません。

 11/22 福岡にて 九州地区のダイオキシン・ネットワークの結成会がありまし

た。そこに昔 久留米に住んでいたという 73才の品のいい婦人がおられ、除草剤

に含まれたダイオキシンの恐ろしさを切々と訴えられました。その方は 昭和35年

に近所で或る化学工場が稼動し始めてすぐ体調が崩れる被害が出始めに勝って

工場閉鎖になるまで、操業中止の署名を集めたり 東大の高橋先生を招いて講

演会をしたり、座り込みをしたり、病をおして何度も陳情のために上京したり、何も

知ろうとしない人達の中傷にあいながら ご苦労されたそうです。福岡に引っ越した

今も まだ決着のつかない裁判を続けているということでした。

九大の学生さんたちがそのような 清川さんたちを支援していたそうですが、その頃

工場では排水を大きな穴に捨てていたそうで、その周辺ではガンで亡くなる方が

多かったそうです。今でも多いと言われています、このような話は 何かと差し障りが

有りそうでなかなか話せない、だから 誰もが自分の身に被害が及ぶまで、公害問

題を自分の事として考えられないのかもしれません。

 南筑高校の秋山先生や無農薬農家の寺松さん、大石さんもその頃 支援をされ

た方達で、信愛高校の橋田先生も九大の学生さん達と水質検査などの支援をさ

れたそうです。

その頃 創られた学習会が「農薬問題を考える会」と名前を変えて、今も 毎月一度

久留米市の中央公民館で続いています。

 11/24 大分の菊屋奈良義先生が杉谷の森を歩きながら、「合成洗剤を止めて
石鹸を使おうなんて しなくていい!」 こう言われて びっくり、続けて 「石鹸だって

本当は使わない方がいいんだ、そんな事やって 私は環境にやさしい事やってま

す、なんて自己満足してる閑が有ったら もっと森や水源を守る事に時間をつかい

なさい。その方がずっと大事なことなんだ。」ということで 納得。ごもっとも。でも や

っぱり私はみんなに石鹸を勧めたい。先生と一緒に歩くと 今までぼんやりと眺めて

いた処に驚くほど多くの種類の植物が生きていることに気づきます。草の葉をちぎ

って鳴らしながらも 先生の自然を愛するお気持ちと危機感が、ひしひしと伝わって

来ました。

本当に大事なことは何か、どちらがより大事なのか、どちらが本当に急ぐことなのか

、今 何をすべき時なのか、間違えないようにしたいものです。

いま、日本は経済、福祉(高齢化…)、労働(女性…)、教育、環境と難問が山積

みです。しかし、その中でも 直接 多数の生死にかかわる環境問題、特に水や大

気は別格です。最近の新聞によると 市は「地元」を予定地に極く近い2地区(17

世帯)に限定して、高良内町民を締め出し、来春こそは着工のつもりで着々と手を

打っている様子です。ですが きっと まだ間に合います。人間が水槽の中の熱帯

魚とならないために、子孫に少しでもきれいな水と自然を残すために 保安林解除

を止めなければなりません。

今、大人達が行動することは 子供たちに生命の大切さを教えることにもなるかと思

います。理屈はいりません、「あなた達の生命と未来を守りたいから水源地を守る

の。」でいいのです。

筑後川の水を飲む人、ゴミをだす人は勿論、飲まない人も出さない人も、一人でも

多くの方に この事を真剣に考えて欲しいと思います。みなさま お集まりの際には

どうぞ この件をぜひ 話題になさってください。 そしてまた、すぐ近くにゴミの最終

処分場ができても困らないような ゴミの処分の仕方などをも みんなで考えましょう。

御忙しいとは存じますが ほんの少しでも結構です、ぜひ、ご協力をお願い致しま

す。


               筑後川の水源を守る会 福田 万里子