筑後川だより No.11       H13.1,9

(緊急報告) 

        

 明けましておめでとうございます。

とうとう 21世紀です!

20世紀は愚かな「戦争の世紀」と言われましたけれど、21世紀は「環境の世紀」。

「自然は子孫からの預かり物」これが私の21世紀のキーワードです。

 地球上の生命にとって究極の自然とは何か? 

それは水と空気です。そして、自然とはその水と空気に育まれた支え合う様々な

生命の集まりです。

経済も人権も女性参画も老人福祉もボランティアもゲートボールも戦争や平和で

さえも生命有ってこそ、きれいな水と空気が有ってこそではないでしょうか。

新世紀には水の問題で戦争が起きるであろう、と予言した人が有りましたが、

すぐ身近なところですでに始まっています。

それが久留米の杉谷(実は寺尾谷)と筑後川の中洲、通称中島畑です。子孫に安

心して飲める筑後川の水を残したい、ただそれだけが私の希いです。

これらの下流には4ヶ所の大きな取水口が有り、筑後川の水は上水として福岡・佐

賀両県の三百万人余の生命を養っています。そして有明海の無数の生命をも。


 外食産業も学校給食もあります、我家だけは何十万もする浄水機をつけたから

もう安心、では済みません。社会全体が不健康になればその社会は滅ぶのです。

現代のごみや灰には環境ホルモン等が含まれ、その有害さは昔のそれとは比べ

物にもなりませんから、その処分場や処理場が水源地や中洲ではあまりに場所が

悪すぎます。

前述の寺尾谷と中島畑では地元の人々と一握りの有志の人達が今必死で行政を

相手に闘っています。どちらにも代替地は有るのです。

私達が、代替地はここだと言えば事は簡単ですが、それでは第2の寺尾谷問題を

引き起こすだけです。だから言えません。

 複数の候補地から話し合いで皆の納得のいく決定をすることが大事なのです。

それが全てのごみ問題を解決する糸口なのですが、久留米市はそれでは間に合

わないと12年間も言い続けて、なぜか寺尾谷に固執して変えようとしません。

 しかも一時的な処分場は他にも有るのに菊池水源の上流に久留米市のごみを

持って行くようにし、市民の加害者意識をかき立てて口を封じてしまいました。

たった15年間の私達久留米市民のごみの為に子孫の存続に大きな影響を与え、

子孫に大きな財政的負担をも負わせる、しかも地下水を汚染し続けるという取り返

しのつかない事をしようとしているのです。あなたの子や孫が困るのです。日本国

中650ヶ所で同じ様な問題が起きていますから、他県に住んでいても被害は免れ

ません。自分さえ良ければ、では済ませられない問題なのです。

筑後川の周辺にはすでに様々な汚染源がある事も事実で、勿論それらの対策も

早急にしなくてはなりません。しかし上記2ヶ所ではその汚染源を新しく造ろうとして

いるのです。それも行政が私達の税金を使って。

何としてもそれだけは止めてもらわねばなりません。

市は「安全な施設を造る」というのですが、昨年の9・10月の裁判で、市の実務的

責任者環境部部長の証言から、市のいう「安全」には根拠の無い事が判明しまし

た。殆ど“造りたい業者”の言いなりです。その証言は傍聴席から思わず失笑が湧

く程のお粗末さでした。責任を取りたくない気持ちがみえみえでした。もし、この裁

判で地元民が負けるようなことが有れば、それは行政がらみとなると裁判官でさえ

中立では有り得ないという事でしょう。

 寺尾谷は例えば大小の菱餅(お雛祭りの)を接着剤なしで積み重ねた様な地質

の所で、20年程前に水を溜めるためのダムを作ろうという計画が起きた時、とても

水が溜まる所では無いとして、すぐ沙汰止みになったという曰くの在る所ですから

、処分場が造られて大量の焼却灰を埋め立てた後、シートが破れたり施設が壊れ

て有害物質が流れ出し始めたら、もう元に戻せるものではありません(半永久に川

水や地下水、久留米市の地下が広範囲に汚染され続ける)

 活断層や酸性雨、集中豪雨など異常気象の心配も有ります。その時にどうなる

か、どうするのか、万が一の場合の危機管理意識は無い。今さえよければいいと

いう考えです。情け無い事ですが、今の多くの行政はその程度です(少なくともご

み関係は)。みんな“任期”という都合のいいものが有りますから。

 ならば、私達は造る前に反対するしかありません。

そこで地元の人達はこの寒い中、山に篭もり“子孫の為”と念じながら信念を持って

頑張っておられるのです。お年寄りが多いのですが誠に見事なものです。

寺尾谷問題がどうして12年も続いてこれたのか? それは「子孫の為」という大き

な命題が有ったからだと思います。

暮れの12月25日、県はなんと“書類上の不備はない”(安全面は問題なし!? 

何という無責任ぶり! )と いうことで市の処分場建設着工の申請書を受理しまし

た。いよいよ着工ということです。


新世紀が明けたばかりの1月4日午前9時半、杉谷では谷の上下3ヶ所で工事に

入ろうとする市の職員等と地元住民やその支援者達とで交渉が始まりました。

 人々は土地の取得方法にも問題があるし、裁判もまだ終わっていない、安全性

についても納得のいく説明は受けていないから、せめて今此所で説明をしてから

にしてくれと言うのですが、市のほうは今は出来ない、もうその必要も無い、自分達

は仕事で来ているのだから入れてくれ、と言う。

わざわざ、反対住民の集結を待って「入らせろ、工事をさせろ」と交渉を始めるの

は、交渉中に顔写真を撮って妨害禁止などの仮処分をするためでしょうか。 

民主主義に則り、前もって納得の行く説明が欲しいと願っているだけですのに。

今日、1/9も地元の人達は朝の9時から弁当持参で寒い山に篭もり焚き火を焚い

て、「雨が降ってもかまわん、おれたちは仕事じゃあ無い、子孫の為に仕事をおい

て命懸けで来とるんじゃ、」と氷雨の降る中に頑張っておられました。

が、夜のニュースによると交通妨害等の仮処分が申請されたようですから、何人か

はこの場に来れなくなりそうです。

しかし、ここで着工を許したらズルズルと巨大な処分場が出来上がってしまいます

。谷川にそって安易な擁壁を立てて済ますという設計も保安林解除を促す為のも

のでしょうし、今が寺尾谷にとって正念場です。

もし、このお年寄りたちの抵抗がなかったら、寺尾谷はとっくに、水と猛毒の漏る粗

雑で巨大な焼却灰などの処分場になっていたに違い有りません。 

筑後川の水を飲んでいる300万人は皆この事を忘れてはなりません。

「処分場はどこかに要るのだから寺尾谷でもいいじゃないか、住宅からも遠いし」は

、もう止めてください。そんな無責任なことは有りません。勉強が足りません。責任

のある大人ならせめて現地を見て私たちの説明を真剣に聞いてみてください。 あ

なたの出したごみなのです。

 


次に、中島畑のことですが、

浮羽三町は(浮羽郡衛生施設組合)は県に対し、計画書を提出しました。今県が

審議しているところです。寺尾谷と同じ事にならなければいいのですが。

対岸の杷木・朝倉の方達が洪水や風評被害、川水の汚染を心配して署名運動や

県庁への陳情は勿論、デモ行進や座り込みをするなど、町をあげて反対運動をし

ておられます。

また、中洲の自然環境を守りたいという女性グループが「中島探検隊」を立ち上げ

、すでに500人以上の近隣の人達を中島畑に案内し、協力を呼びかけておられま

す。

私の「筑後川の水源を守る会」では水を飲んでいる人間こそ団結して、汚染を未

然に防ぎ、水を守らねばならないと考え様々な方面に呼びかけて、環境団体はも

とより保育園など45団体と20名の賛同を頂く事が出来ました。広域なので大変で

すが 日頃、未来を担う幼児を慈しんでおられる園の先生方にはすぐ御理解頂き

協力して頂きました。もっと賛同者を増やしていくつもりです。


12/26 筑後川を管理しその環境を守る責任の有る建設省の九州地方建設局

筑後川工事事務所吉井出張所、次に久留米の工事事務所へ代表5人で45団体

と20名の「要望書」を持って行きましたが、驚くことにどちらでも受け取りを拒否さ

れてしまいました。民主主義国のお役所が国民の声に耳を塞ぐとは…。

これでは私共の役目が果たせませんので、すぐ建設省九州地方建設局河川部長

に配達証明付で郵送しております。まだ返事はありません。その時の要望書を筑

後川だよりの目次ページに付けましたのでご覧ください。

麻生知事には寺尾谷・中島畑それぞれの「意見書」を郵送しました。こちらも返事

はありません。

 保健所にはこれまでに2度行きましたが、先ずは迷惑がられているという感じ、権

限がないという事も有りましょうが、環境ホルモンや水の汚染による300万人の健

康、子孫への影響より、人々がパニックを起こす事や事業者の生活権の方が優先

するという対応に感じられ、県や建設省共々環境を守る立場のお役所の無責任ぶ

りに唖然とする事ばかりでした。お役所不信がますますつのります。


 12/25 中島探検隊の方達の田主丸町長への要望書提出に同道、RDF工場

は火災が発生し易く川水の汚染を下流住民が心配している事、現在三町で使わ

れている田主丸町の焼却炉は性能が良く、もう少し分別を奨めるだけで2002年

の新基準も充分クリア出来る事、インターネットでも多くの人が心配している事、な

により中洲をごみの島にしてしまっては筑後川の汚点となり筑紫次郎の名折れとな

る事など等陳情して帰りました。

この後、対立している杷木・朝倉の二町と浮羽三町の初めての話し合いが有った

そうですが、その席で田主丸の町長さんが少し考える必要が有りはしないかと発言

して下さったそうです。すこしはお役に立ったかもしれません。

  久留米・寺尾谷の処分場着工予定の1/4には今村由子市議の骨折りで、ア

ウトドアライターで環境問題に詳しく現在、長良川河口堰問題で活躍中の天野玲

子さんと東京日の出町の活動家橋本真一さんが現地に駆け付けて下さり、天野さ

んには中島畑も見て頂きました。

先日は筑紫哲也さんがテレビで中島畑の件を取上げて下さったそうですし、これ

らを機会に二ヶ所の筑後川問題が全国に広まってくれることを祈っています。

中島畑も寺尾谷も300万人の飲料水である筑後川の水を汚染する危険が非常に

有るという点で全く同じですが、寺尾谷の場合環境ホルモンなどの猛毒を含む焼

却灰が大量に持ち込まれ、しかもそれが地下水となって久留米市の地下を広範囲

に汚染してしまうという点が更なる悩みです。 

 

戦後の復興期、バブル時代と生きて来る間に私達はすっかり環境を汚してしまい

ました。

私など子育てに一生懸命でバブルの恩恵に預かったとも思いませんでしたけれど

、いつしか世の中の便利さにすっかり馴れてしまっていました。しかしここまで便利

でなくても、と思う事は沢山あります。

戦後の復興期は生きる為でしたし、環境汚染も昔は知らなかった事ですから仕方

が無いのですけれど、「生命を受け継ぐのが人間の生物としての究極の“務め”」で

あるならば、せめて私達、子育ての終わった人間は(子孫の有無にかかわらず)こ

れからは子孫の為に環境をもとに戻す作業をしなくては死ねないのではないでしょ

うか。それくらい先進国日本の環境汚染は進んでいるし、対策は非常に遅れてお

ります。

テレビの政治放談で溜飲を下げているだけでは環境も社会も良くはなりません。

習い事も旅行もボランティアもいい、人生を楽しむ事も大切ですが、それらの何割

かの時間と労力を環境問題の勉強などに費やし、ほんの少し不便さを我慢してご

みを減らす事が必要だと思います。最も大事な事は行政の広報を丸ごと信じるの

でなく、双方の意見を聞き自分の目で確かめ調べる事が必要です。

環境問題は複雑で非常に奥が深い、下手をすると今多くの行政がしているような、

かえって環境を壊すような事にもなり兼ねません。

アンテナをピンと立てて聞いて、見て、読んで、知識を増やして下さい。

そして先ず、新しい汚染源を造ってはいけないこと、次にごみを減らさなければな

らないことを一人でも多くの人に伝えて下さい。

パソコンを持っていらっしゃる方はインターネットを活用しましょう。 筑後川の環境

問題について考え、自由な立場で発言できるメーリング「インターネット筑後川ML」

が今盛り上がっています。

現地を自分の目で確かめ、それを周囲の人達に知らせる、またはメーリングに参

加して意見や疑問をどしどし出す、それでもう立派な環境ボランティアです。

環境問題はやり甲斐の有る仕事です、元気が出ますよ!

☆ 水や空気を守る運動活動に党派は必要ありません。

私達は超党派で力を合わせて頑張っています。

☆ 中島探検隊(中洲の現地見学会、地元の方が案内)のお誘い。

見学の最後は眼下に中島畑を見下ろし、筑後平野を有明海に向って悠々と流れ

る筑後川の、素晴らしい風景を見晴らす丘の上にご案内します。

    日時  1−6月の第1・3日曜日、(10:30―13:00)

    場所  10:30 朝倉町民センター集合。(資料代300円+昼食代)

  (午後から、寺尾谷見学も可能です、必要なら早めに福田までご連絡下さい。

  留守の時は、留守録にお名前と電話番号を慌てずハッキリ入れておいて下さ

  い。)

         〒830―0062 久留米市荒木町白口374―3

            筑後川の水源を守る会  福田 万里子

            TEL/FAX 0942―26―8353



☆インターネットのご紹介

           「インターネット筑後川ML」

・ メーリングリスト(ML)への参加申し込み:

  下記ホームページを開き、自分のEメールアドレスを打ち込めばOKです。

  http://www2.ktarn.or.jp/~donge/ChikugogawaML/IT-chikugogawa.html

・ メーリングリストの名称: インターネット筑後川ML

・ MLへの投稿の宛先  : chikugogawa@freeml.com


「中島畑の実状」のホームページのアドレス

http://www.geocities.co.jp/WallStreet/3852/kankyou.html#nakashima

 

☆ 「筑後川の水源を守る会」のホームページ!!


☆  中島畑や寺尾谷(杉谷)の件では 筑後川の水を守って欲しいという

  「要望書」を再度、県知事に出す予定です。(内容は後に添付の要望書に

  準じます。)

   ご賛同の上、連名して頂ける方や団体が有りましたら大歓迎!!

   ぜひ、上記の福田までご連絡をお願いします。

   必要なら、ご説明にまいります。

追記

1/24 市から申請されていた、49名(地元住民45名、支持者4名)の一人として

、 立入り禁止、通行妨害禁止等の仮処分を受けてしまいました。

一昨年の測量阻止の時は数人ずつ何回かでしたが、今度は市も急ぐのか一網打

尽という形です。“0”になるまで処分を続ける気かもしれません。いよいよ忙しくなり

ました。

私はチラシ配りなどしているうちに風邪をひきこんでしまい、それでも寝てもおれず

県庁へ行ったり、家で筑後川たよりなど書いていたのですが、地元の方達は

1/22からまた、寒い中、早朝から山に日参して寺尾谷を守っておられます。

環境ホルモンの影響は緩慢です。しかし1―2代の世代交代の後、影響が出た時

はもう手の打ちようは有りません。同じ公害でもその深刻さは水俣病の比ではない

のです。

すでに起きている若者の精子の減少、若い女性の子宮内膜症や不妊治療者の増

大はとても気になるところです。すでに汚染の影響は出始めているようです。

水は水そのものが生命の源であるばかりでなく、有毒物質を大きく拡散させる働き

をしますから、寺尾谷問題はそこが水源地であり雨水の集まる谷間である限り、単

に久留米市のごみ捨て場問題では有り得ません。中島畑と同じく、福岡・佐賀両

県に跨る社会問題となります。有明海の汚染を考えると影響は更に膨大なものとな

ります。

市は焼却灰を安全な物に変える為と称し11億円をかけて工場を建設中ですが、

それは重金属対策にはなってもダイオキシンなどの環境ホルモンへの対策にはな

りませんし、灰を処分場へ運ぶための積み下ろし時にそうとうな粉塵が舞う事は既

成の事実です。その埃は容易に処分場の擁壁を越えてすぐ脇の寺尾川に舞い落

ちることでしょう。また焼却灰の埋め立て地に降った雨は有害物質と共にセメントな

どの隙間から地下水となって、久留米市の地下を広範囲に汚染しつつ、筑後川へ

有明海へと流れていくことでしょう。

米国では汚染された地下水の浄化に莫大な税金を遣い続け、汚染土の除去に大

金を遣っているそうです。日本でも四国の豊島などで後始末が始まっています。

私達の子や孫を少子化と病苦と老人介護と財政負担の四重苦が待ち受けていま

す。

唯一の解決法は市民みんなで真剣に話し合うことです。何れしなければならない

事ですし、結局は一番の早道です。

市民全体で考える処にごみ減量の成功が有りますし、それに見合う、より適正な処

分場と施設の決定が市民の納得の上で出来ます。着工前の今なら、まだ間に合い

ます。

 どうか皆さんも寺尾谷(杉谷)の処分場化を考え直すよう市への働きかけやその

手伝いをお願いします。                

2001・1・21