筑後川たより No.1

                             H9.4.5

 現在問題となっている久留米市のゴミ埋め立て予定地、杉谷地区は耳納連山

を背に、先年の異常渇水の時さえ水量の変化がなかったといわれるほどの水源

地です。

 初夏には蛍でクリスマスツリーが出来、清浄な水と空気、そして湿気がなけ

れば育たないと言われる貴重な羊歯(シダ)の宝庫でもあります。

 そしてまた過去にはダム建設の話もありましたが、崩壊、崩落が多い地盤の

悪い土地であるため問題にもならなかったという、曰くのある所でもあります。

 ここより流れ出た水は伏流水となって付近の井戸水となり、また筑後川に流

れては福岡や久留米市民の飲料水となり、佐賀や筑後の田畑の作物を潤し、

更には有明海のさまざまの生き物を養う、そのような水の水源地です。

このような貴重な水源地を焼却灰などの猛毒を含んだゴミで埋め立てるという

のは、まさに井戸に持続性のある毒を投げ込むのと同じではないでしょうか。

 実は私の高校時代の友人で水俣病に罹患した人がいます。校長だった父上

の赴任のため水俣湾より30数キロ離れた御所浦という島で、育ち盛りの小中学

生の一時期をすごしたためです。高校卒業後、青春時代の数年を熊本の大学

病院で過ごし、現在も体をいたわりながら過ごしています。水は毒を拡散し、公

害は人を選びません。

 私達の世代はまだしも子、孫と世代を重ねるにしたがって有毒物質は急速に

濃縮されて行きます。水で薄めれば大丈夫と言う人がいますがそのような生易

しいものではありません。安全性の基準というのはダイオキシンを例にとると

日本は先進国の中では最低で、最も厳しい米国に比べるとなんと2桁も甘いの

です。

 市が安全を強調しているゴムシートも、1月15日の久留米市清掃部発行の

パンフレットによればメーカーはせいぜい2年ないし10年間しか保証してお

りませんし、ゴミを埋め立てた後のシートの管理など出来るはずはありませ

ん。また、杉谷地区の地形から見て、筑後川大水害のときのような集中豪雨が

発生した場合、ゴミ埋め立て地から流れ出したり、地下に染みこんだ有毒物質

は二度と取り除くことは出来ず、水とともにいつまでも筑後川に流れ込み続け

ます。たとえ現代の技術で最善の工事をしたとしても、地震や大雨などに対し

永久に大丈夫といえる施設など造れる訳はありません。

 

 環境アセスメントをいうなら、水源地は真先に候補地から外すべきではない

でしょうか。

たしかに産業廃棄物であれ家庭のゴミであれ、すべての廃棄物は直接間接的

に私達ひとりひとりが出しているのですから埋め立て地は無くては済みませ

ん。しかし水源地を埋め立て地にしたらゴミを出した私達まで加害者になって

しまいます。

 このように安全性に問題がある杉谷地区の件を先ず白紙に戻す必要がありま

す。それと同時により危険の少ないと思われる場所を探し、ゴミの減量や有毒

性を減らす方法を今すぐ考え、実行する必要があります。市役所の限られた人

達で考えるのでなく、民間にはさまざまの専門家がいらっしゃいますからきっ

と良い知恵があるはずです。

 例えば狭くても数多く深く作れば良い。2、3年したら埋め戻して公園など

文化施設にすればまわりの地価も上がるでしょう。施工をきちんとして人目に

つく所に作れば管理も行き届きましょう。(ちなみに、現在久留米市で埋め立

てるゴミは不燃ゴミと生ゴミの焼却灰であり、昔のように生ゴミを埋め立てる

ことはありません。)今回、杉谷地区に決定する前にすでに5、6個所の候補

地があったにもかかわらず、それらは何の検討もされないまま15年後の候補

地とされているそうです。

 ゴミの減量についてもすでに様々な技術が開発されていると聞いておりま

す。税金はこういうものに使うべきです。水源地がゴミ処理場となる時、ゴミ

問題は水問題となります。

これは人々の命に関わることであり、久留米市民の名誉にかけて取り組むべ

き事であります。

先祖から受け継ぎ、子孫からの預かりものである、そして生命の源であるこ

の貴重な水源地を、生命を枯らす汚染源にする訳にはいきません。

それでなくても地球上はすでに環境汚染がすすんでいるのですから!

平成9年4月5日

   筑後川の水源地を守る会

福田 万里子(荒木町在住)

(注)ダイオキシン=ベトナム戦争で使われた枯れ葉剤に含まれていたもの

   で、催奇形性、発癌性がある猛毒です。