ワインの涙
First Upload: 2005/7/14, Last update: 2005/8/12

s07140004.jpg 2005年7月10日,輸入ワイン商P社の営業のK氏から自宅に電話があった.
P社のK氏からの電話は,ワインをケース単位で買いませんか,という用件以外である可能性は極めて低く,即座に,『今,ワインクーラーに入りきらないでその辺にワインがごろごろしている状態なんですよ...』と言った.
K氏は『2000円台のラグランジュもあるんですが...』と.
『え゛!?』と私.『ラグランジュなら,買いますよ.』
K氏『物によってはお買いになるんですね(^_^;)』
ワインについてはそれ以上の話はせず,すぐに送ってもらってよいこと,送り先を職場にしてもらうことなどを話して電話を切った.

7月13日朝,運送会社から電話があった.
電話交換手は多分私宛の電話だと思いますが,みたいな取り次ぎ方をした.
運送会社からの電話の用件は『どちらになりますか?』
運送会社になりすまし,私に刺客を送り込もうとしている電話なのかもしれない,とも思わなくもない今日この頃,はじめて来るところでもないはずなのに,なんで建屋の場所まで説明しなくてはいけないのか...と疑問に感じながらも受け取り場所の説明をした.
s07140005.jpg 約2時間後,最近では一番の豪雨の中,ダンボール箱にはわずかな雨粒が当たった跡があるだけで,ひどくぶつかった跡やひどく濡れた跡はなかった.
18本は入るであろうダンボール箱には,丁寧に取り扱うこと,割れ物であること,上にする方向,雨に注意すること示す絵も描かれている.
横の面には瓶が立っている絵も書いてある. 運送業者はダンボール箱に書いてある注意をちゃんと守って運んできたものと了解した.

なぜ運送会社は電話をかけてきたのか,送り先の住所を見て納得した.
職場の名称だけで,部署名が書かれていなかったのである.
私の職場は職員数4桁,敷地内にはバス停が2ヶ所もあるようなところであり,職場の名称だけで届くわけがない.
P社のK氏には電話では部署名までちゃんと話していたのだが,送り先には部署名は含まれていなかった.
どこで情報は欠落したのだろう?
s07130001.jpg 箱を開けてみて驚いた.フィエフ!
買ったのはシャトー ラグランジュだとばかり思っていた.
P社のK氏はラグランジュとしか言わなかったし,ただラグランジュといえばシャトーだと私が勝手に思い込んだといえばそれまでだが,少なくともからはフィエフとは絶対に聞いていない.
まぁそれは良い.2000円台後半のフィエフでも,1本1本セファンに包むような管理をしているのだから,フィエフと知っていたとしても買っていただろう.
しかし,もっと驚くべきことは,ワインは木箱に交互に詰められ,ダンボール箱に入れられていた,ということだ.
つまり,半数は逆さまになって搬送されてきたことになる.
送り状の受付日は7月11日となっているので,2日近く逆さの状態で関東地方から九州まで運ばれてきた,というわけだ.
一見,見た目には大きな異常はなさそうだった.
クール便で送られてきたため,さすがにコルクが飛び出すようなことにはなっていなかったし,触っても濡れはなく,ワインは染み出してはいないように思われた.
s07140001.jpg ただでさえ,ワインは輸送すると『旅の疲れ』が出る,と言われ,数週間静置してから飲む方が良いとされている.
これは,沈殿していた澱のうち細かいものが搬送中に舞い上がるために味に影響が出るためである.
今回はそれどころではない.
逆さまにして関東地方から九州までトラックでゆすぶられてきたのだ.
数日は立てて澱を沈め,その後数週間は寝せておかねば飲めまい...と思い,立てておいた.
翌朝,更に驚くべきことが起こっていた.

5本のワインのラベルがワインで濡れている!
何が起こったのか,原因はひとつしか考えられなかった.
ボトルのキャップの中にワインが染み出していた,ということだ.
一晩立たせていた間にキャップの中に溜まっていたワインが落ちてきてラベルを濡らしていたのだ.
s07140007.jpg 朝8時ごろは5本だったのだが,お昼12時ごろ,更に2本のワインのラベルが濡れていることに気付いた.
一体,どうなっているのだ?
逆さになっていたのは,6本だったはずだが,7本のラベルが濡れるとは!?

P社は他のワイン商よりやや高めの価格設定だが,これはワインの管理に対するコストと理解していたが,このような結果になるような梱包・輸送をするようなワイン商だったとはにわかには信じがたいことだ.
s07140002.jpg 少なくない量のワインがコルクと瓶の間をすり抜けて漏出していたことを思わせるラベルの汚染.
s07140003.jpg セロファンの内側にはワインのしずくが付いているところがあった.
まるでワインが泣いているようだ.



お昼前にP社宛にこのページを見て欲しい旨,電子メールを出していたところ,夕方K氏から電話があった.
フィエフの件について詫びておられたが,その件についてはまぁ,私の勘違いも多分にあったということでもあり,どうでもよいことで...
部署名については,K氏が伝えなかったのではなくて,伝達の途中で消えてしまったらしい.
『失敗する可能性のあることは失敗する』という有名なマーフィーの法則どおりであり,情報伝達の欠落を防ぐための対策が打てるかどうかが今後の課題だろう.
P社では発生源入力方式にはなっていないのだろうか?
ワイン吹き出しについては,P社でもこのようなひどい事例はさすがにはじめてとの事で,本社は大騒ぎになっているらしい.
もちろん全品交換になるわけだが,今度はダンボール箱でボトルを立てた状態で送って来るらしい.

s07200001.jpg さて,12本の新たなワインは17日(日曜日)に到着した(ようだ).
受け取り場所の職場には,3連休返上で仕事に取り組んでいた人がいたため代わりに受け取ってもらっていたが,返品分についての打ち合わせはしていなかったため,運送業者には19日に連絡をとってもらうように言って帰ってもらっていたようだ.

19日朝,運送業者から電話があり,午前中に引き取りに来る,ということになった.
ただ,私は多忙だったため,新しく送られてきた分を開封する暇もなく,職場の方に,運送業者が来たら返品分を渡してもらうようお願いし,所用のため1時間半ほど不在にした.
果たして,私が不在中に運送業者が返品分を取りに来たが,返品伝票が送られてきた箱の中に入っているとのことで開封された.
しかし,ここで,汚損がないか確かめる作業は(頼んでいたわけでもなく)行われなかった.
s07200001.jpg 私が所用を済ませ部屋に戻ると,前述のような経緯で開封されたことを聞いた.
そこで,そっとワインを取り出してみた.
しかし,またもや落胆する結果を見ることとなった.

今回は全てボトルを立てた状態で運ばれてきたはずだが,2つのラベルがワインで汚損されていた.
気をつけてよく観察してみると,更に2本のボトルにはセロファンが張り付いていた.
動かしてみると張り付いている原因はワインの液漏れであることは明らかだった.
クレーム後の処理でもあり,いい加減なことをしているとはとても考えられない.
しかし,現実には,12本中4本もワインが噴き出していたのである.
s07200001.jpg 噴き出したワインで汚損したラベル.
前回のことでこのくらいのラベルの汚れにはもはや驚かなかったが,ボトルを立てて送ってきても同じことで,さすがに溜息が出た.

それにしても,なぜ『お取り換え分』でも少なからぬ比率で液漏れが生じるのだろう?
通信販売で他社から数回ワインを購入しているが,輸送中のワインの噴き出しは全く経験がなく,少々のトラックの振動ではワインは噴き出さないものだと思っていた.
しかし,今向き合わなければならないのは,12本中4本もワインが噴き出していた,という現実である.
ラベルが汚損しているものとセロファンが張り付いているだけのものとを比べてどこが違うかといえば,たまたまラベルにかからない場所にワインが漏れていただけのようだ.
日本国到着に際し、質、外観、液面の高さが許容範囲内であることを保証するため、すべて商品は試飲、検査されています。超高級ワインにつきましてはその後、保護のためセロファンペーパーで包装しています。
とのことなので,検査が終わった後でワインが噴き出した,ということになる.
s07200001.jpg ワインが正しく保管されていた場合,こんなに高率にワインが噴き出すようなことがあるだろうか?
もしあるとすれば,コルクが不良で元から密閉されていなかった,ということになる.
しかし,長期間熟成されることが前提の Grand Vin のワインのボトルに不良なコルクが使われるようなことがありうるだろうか?
24本中,実に11本が液漏れをしていたのであり,そんなに高率に液漏れが起こるのであれば,既に全世界で大問題になっていたはずで,とうの昔に回収されていただろう.
コルクには大きな問題はなかった,とすれば,これはもう不適切な保管〜輸送がなされたということになる.
ワインカーブでは適切に管理されていたとしても,そこから出荷のルートに乗ったときに,互い違いに梱包され,半数のボトルが逆立ちしてしまうような状態に置くような『素人』が取り扱っているのではないか.
逆さに置かれると,コルクにとっては想定外の水圧がかかってしまうであろうから,コルクとボトルの間から少しずつワインが染み落ちてくる可能性はあるだろう.
たまたま私だけが貧乏くじを引いているのならばまだ良い方だが,全国的に同じような事例が起こっているとすれば,これはワインにとって,とても悲しい,大変な事件だ.

それにしても,惜しむらくは,運送会社が引き取りに来たときに不在にしていたことである.
液漏れしていた4本を,液漏れしていなかったものと交換して返品することができたはずだったのに...

さて,7月20日に再びP社に電子メールで,今回もまたワインの噴き出しがあった旨,連絡をした.
P社のK氏からは22日の午後になってやっと電話がかかってきた.
名古屋の万博会場に出張中とのことで,連絡が遅くなったと言っていた.
今回は手渡し輸送だったのにワインの噴き出しがあったため,営業所に同じ条件でワインを送って実験をしているところだとの説明であった.
それにしても,今回は計2回P社に電子メールを送ったわけだが,1回も電子メールで返事をもらっていない.
1回目は電話をもらったのがその日のうちだったのでそう気には留めなかったが,今回は電話があったのは2日後だった.
営業担当から連絡をさせるが,出張中に付き,少々遅くなるかもしれない,くらい,返事してもバチは当たるまい.
さて,26日にK氏から電話があり,実験の結果,再現しなかった,とのことだった.
受取日をこちらでは指定していないのに,連休の中日に付くように送ってくるものだから,ワインが到着してからすぐに状態を確認できていないため,到着後の保管状態を疑われてもしかたがない.
なお,お詫びとしてK氏が持っているレゼルヴ・ド・ラ・コンテス1997を2本,後日送ってくれることとなった.

2度も輸送中にワインの噴き出しがみられたため,ラグランジュの所有者のサントリーにも報告をしてみた(7/20/16:15).
コルクの品質に問題があるのであれば,情報を持っているかもしれないと考えてのことだ.
サントリー株式会社お客様センターからは22日19:50にお返事をいただいた.
ラグランジュ製品はコルク栓と液面との空間が少なく,短時間でも温度上昇によって漏れることがある,とのことであった.
漏れても品質上には問題はない,とも書き添えてあった(別に意外なことではないが).

s08120001.jpg 8月12日,ワイン2本が届いた.
今回はクールペリカン便ではなく,西濃運輸で送られてきた.
発送元は北九州市小倉区.
西濃運輸にはチルド便はあるが,冷蔵運送サービスはないようで,普通便で到着.
さすがに,0℃〜5℃のチルド便はワイン輸送には使えまい.
『われもの注意』のシールが4ヵ所に貼ってあった.
ちょっと気になったのが,発送日は8月8日となっている点.
月曜日に発送して金曜日に到着というと,amazon.com に注文してもそのくらいで届いたりするのだが...(^_^;)
s08120003.jpg ワインは1本ずつ発泡スチロールのワインケース(?)に入れられていた.
ふたつのワインケースの間には完全に溶けて常温になってしまっている保冷剤が詰め込まれていた.
これらはP社のものではなく,ケーキなどを買ったときに付けてくれるものを再利用したもの.
s08120004.jpg 日数がかかっていたので少し不安であったが,今回はワインの噴き出しはない様子.

本日,別のワイン商からネットショッピングをしたが,次のような電子メールが来た.
クール便使用又はセラーからの温度差等でワインに液漏れが生じる事がございますが、ワインの品質には何ら問題がございませんので、交換・返品はお受けいたしかねます。(梱包時に目視で全てチェックしております。)
クール便を使用すること自体が液漏れの原因となるという事例を経験しているかの但し書き...
夏場にワインを輸送することは避けた方がよいのかもしれない.