幸せを運ぶ存在(もの)



ショーウィンドウとにらめっこ。
露店の前で百面相。

「どうしようかなぁ…どれにしようかなぁ…」

ぶつぶつと呟きながら大通りを歩いていくその人影は、
騎士見習いのガゼル=ターナであった。



「ガゼル」

「…あれはちょっと俺には手が出せないし…」

「ガゼルってば」

「…ディアーナの喜びそうなものじゃなきゃ…」

「…がーぜーるー」

「…でも王女なら大抵の物はもってるだろーし…」


「えーかげんに気付け――っ!」


べしっ。


ガゼルは、頭への鈍い音とともに、道に突っ伏した。



「トリップするのは勝手だけどねー、
人が話しかけてるのに無視するなってーのっ」

ご丁寧に腰に手をあてたスタイルで、
ガゼルを殴った犯人は、枯葉色の髪をさらっとかきあげた。

「メイ…なにすんだよー」

「痛かないでしょ、たかだかレポート用紙を丸めたやつではたいたくらいじゃ」

口で勝負して、目の前の少女に勝てる者は数えるほどしかいない。

ガゼルはむぅーと唸ると、反論を諦めた。
黙秘も、するだけ無駄と判断したガゼルは、ため息をつきつつも、
実力行使で問いつめられる前に白状した。


「…誕生日が近いから、ちょっと…迷ってただけだよ」

「誕生日?誰の?」

「あのな…」

「じょーだんよ。大事な友達の誕生日忘れるわけないじゃない。
で?ディアーナに何をあげるか、決まったの?」

「決まってたら、迷いながら歩くわけないだろ」

「そりゃそーよね」



ガゼルの淡い恋心を知っているメイは、
プレゼントに悩む少年に助け船を出してやろうと
相談に乗りがてら、大通りをぽてぽてと共に歩く。


ショーウィンドウに飾られている華やかな服や
露店で売られている可愛らしいアクセサリー。
どれもこれもディアーナに似合いそうだが、――何か違う。


「それでも喜んでくれるだろうとは思うんだ。
あいつ、たまに我が儘なとこもあるけど…優しいから。絶対嫌な顔なんてしない。
…だけど、やっぱり、本当に喜んでくれるプレゼントがしたい。
ありきたりなものじゃなくて、俺にだけしか贈れないような…」


「…なんかていのいいのろけを聞かされてる気もなきにしもあらずだけど。
ま、その気の利いたプレゼントがしたいという意気は上等ねっ」

(…実際のとこ、ディアーナは、ガゼルがくれる物なら、
なんでも大喜びすると思うんだけどねぇ〜)

メイは心の中で呟いた自分の台詞にため息をこぼしつつ、
恋人未満の友人達の不器用な恋を、温かく見守っていた。




「――なかなか決まらないものねー」

大通りを端から端まで歩いて、さしものメイも少々疲れが出てきた。
自分の買い物なら日がな一日だろうと疲れないのだが、どうも勝手が違う。
大通りを抜け広場へとたどり着いた二人は、噴水に腰掛け一休みする。


途端、群を為していた鳩たちが、一斉にバサバサと飛び立っていく。

「ひょー…、壮観!」

思わず群れ飛ぶ鳥たちを見上げた二人は、暫しそのまま見とれる。

「あ…今、群の中に、青い鳥が交じってた。珍しいな」

「へえ…こっちの世界でも青い鳥って少ないんだ?」

「まぁ、こんな街中だとな。
…メイの世界もなのか?」


「うん。ま、いるとこにはいるけどやっぱり街中じゃ見ないわね。
それにあたしの世界じゃ、青い鳥が幸せを運んでくれるっていうおとぎ話があるの」


滅多に見かけない青い鳥。
幸せを運ぶ…青い鳥。


「――そっか…ありがとう、メイ!」

「え?え?なに?」

一人で結論を出して走り去って行ったガゼルの後ろ姿を、
メイは、話を飲み込めないまま見送った。



俺が一番見たいのはディアーナの笑顔。
俺の一番の望みは、ディアーナの幸せ。
異世界の話でもいい。祈りを込めて…願いを込めて。

心からの想いを込めて、お前に贈れるもの、見つけた。



そして時は移ろい数週間後。

「わたくしの誕生日?
ええ、とても素晴らしいプレゼントを頂きましたわ。
可愛らしい青い鳥を、見せに来てくれた方がいらしたんですの。
王宮にいますと野鳥を見る機会なんて殆どありませんから、
……嬉しかったですわ♪」


御茶会の席で、彼女の誕生日が過ぎたばかりだという話題に、
ディアーナは嬉しそうに、楽しそうに、桜色に頬を染めた。


「…やるわね、あいつ」

メイは楽しそうに笑いながら、ディアーナの幸せそうな笑顔を心から喜んだ。



青い鳥は幸せを運んでくれる。
ディアーナに幸せを届けてくれるように思いを込めた、青い鳥。

だけど、ディアーナに幸せを運んでくれたのは、
――金の瞳をした、銀色の鳥らしい。

fin.


ディアーナお誕生日創作です。…ですが落ちも弱いし話も変ですね。落としたほうが良かったかな(汗)
PS版の誕生日イベントから。ガゼルのプレゼント、良かったです(笑)
奇をてらっているのに、気の利いた贈り物でしたよねっ!
ガゼル×ディアーナ…なのにメイばっかり目立っているのは何故だろう(笑)