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 女王と炎の守護聖がいるだけの、昼下がりの静かな宮殿の中庭。
 そこで行われているのは、二人きりの茶会───

 と言ってもオスカーの方は、最初からそのつもりで此処に来ている訳ではなかった。
 庭園の木陰で一人物思いにふけっていたときに緑の守護聖と風の守護聖に捕まってしまい、女王陛下のプライベートな茶会にと強引に引っ張って来られる羽目になった、という訳だ。お子様達に付き添うついでに顔を見せるだけのつもりだった…筈なのだが……
 「じゃあね、ロザリア。がんばってねー」
 そう言って金の髪の女王補佐官は、年少組二人を引き連れてさっさと退散してしまった。
 かくして、オスカーとロザリアは二人だけその場に残される事になった、という訳である。

 (全くあの子ったら…妙なところで気が利くんだから……)
 内心でそう呟きながらもしかし、ロザリアは親友達が作ってくれた折角の機会を逃すつもりなど更々なかった。予め準備されていたティーポットで、オスカーに手ずからお茶を煎れていく。
 が、その光景を目の当たりにする炎の守護聖の胸中は、決して穏やかなものではなかった。
 プレイボーイと巷では言われていても、守護聖である事に対する責任感は人一倍強いオスカーである。即位の儀で彼自身が誓った言葉の通り、ロザリアが女王の座に就いた時点でその思いは自らの心の内に封じ込めるつもりだった。
 「どう…なさいました、オスカー様?」
 ああ、何という懐かしい、そして甘やかな響きだろうか……
 彼女の口を突いて出てきた、本来であれば女王が守護聖に対して使ってはいけない筈の敬語──それが彼女の女王候補時代に戻ったような錯覚すら、オスカーに覚えさせる。
 だが自分は守護聖。そして彼女はこの宇宙の女王。どう足掻いてもその現実を覆す事など、できはしないのに…。
 そんな男の心情を知ってか知らずか、ロザリアはお茶を煎れていた手を止めてオスカーの顔を覗き込むのだった。
 「遅くなど…ございませんわよ、オスカー様」
 え、とでも言いたげな表情をしてロザリアをまじまじと見つめる炎の守護聖。完璧な女王陛下というものを体現したようなこの女性の口から、まさかそのような言葉が出てこようとは思ってもみなかった、というのが正しいだろうか。
 「一体どなたが決めた事なんでしょうね? 『女王は恋愛をしてはいけない』なんて事…実際のところ、根拠など何処にもございませんのにね」
 もっとも、こういう風に考えられるようになったのはあの子のおかげなんですけどね…と女王陛下は悪戯っぽい笑みを浮かべるのだった。彼女の指す「あの子」というのは無論、金色の髪の女王補佐官の事だろう。
 ここに来てようやく、炎の守護聖は補佐官と後輩達にまんまとはめられたと悟る事になった。今の今までそれに気付かなかったのは不覚だったが、嫌な気分にはならない。
 全くこのオスカーともあろう者がな…と内心で苦笑しつつ、たまにはこういうのも悪くないと、思いがけず降ってわいた恋人と二人きりの茶会の時間を楽しませてもらう事にした。