花守



今思い返しても不思議な巡りあわせでありましたね。


出会いそのものは、数多いとは言わぬまでも珍しいものではありますまい。
ですが、そのときはのちに不思議な縁を持つことになるとは考えもしなかった。

私が、伝承にしか残らぬ『八葉』として、
そして彼の姫が……そう、あなたが、
跡目ただ一人をのこすのみの『星の一族』としてなどと。



嵐の夜に鳴神に怯えていた幼い少女が、
その小さな肩に重責を負う身と知るのに、それほどの時は必要とせず、
知ってしまえば興味を持ってしまう。
ふふ、私という者の性(さが)というものですかね。

しかし、興味をもつことと、絆をもつことはまた別の話です。
興味を持つだけならば、うわさ話に花を咲かせるのと変わりますまい?


――――どういうことか、おわかりになりますかな。


支えてさしあげたい、と………思ったのですよ。


調子のいいことを、とお怒りなさいますか?
それとも、女人には全てそう考えるとお思いになりますか?

……信じてもらえるかはわかりませんが、
私は、誰の命がなくともあなたのために尽力したいと思ったのですよ。


けして婀娜(あだ)めいたような想いからではない。
幼いながらに、自らに課した責務と宿命に誇りをもつ姫に、
ほんのささやかなお力添えをしたいと、純粋にそう思ったのです…。


……そのときは、本当に。純粋にそう思っていたのですよ。



今は違うのかとは…お訊きめさるな。


実は…私にも答えようがないのです。
訊かれても、曖昧な笑いで誤魔化すより他にどうしようもできないのです。


支えたい、力になりたいという思いは変わらぬのに。

……それが、純粋な想いであるかには、自信が持てないのですよ。


だから、どうかお訊きめさるな。
………あなたには、まだ訊かれたくありませんから。


この言葉の意味も。
今の私の胸の内も。


ですが、いずれ、お話しいたしますよ。


それまで、私はあなたのそばでいつも笑っていましょう。
あなたが心安くいられるよう、見守っていましょう。



あなたが他の誰かに手折られることのないよう、
誰にも触れさせぬ、いささか我が儘な花守でよろしければ、
幾月でも、幾年でも……。

そう、もう少し藤の花が綻ぶまで…。
あでやかに、華やかに、藤の花房が咲き誇るまで…。

いつか、橘の木のもとで咲き誇る藤の花になってくださるときまで……

突発友藤〜。つか橘藤。(こっちの言い方の方が合いますな、今回は)
えらく短いですが、友雅から藤姫にあてた手紙か、もしくは内緒話ってところです。
最初は完全にモノローグだったのですが、藤姫に語りかける形式に急遽変更。
藤姫の応答も入れようかと思いましたが、やめました。ない方がよかったので。