小児漢方治療の特徴
 小児の体質は一般的に実熱の証であるので麻黄を含む処方の適用が多くて附子を含む処方が使用されることは少ないのです。
「「気」「水」を重視して「血」についてはあまり考慮する必要がないといわれています。
高齢者と対極的ですので、高齢者に現れがちな「陰虚」「陽虚」とは逆の現象がみられることが多いので、麻黄や地黄の副作用は、大人に比べてあらわれにくいのですが、発疹、便秘などの軽い副作用の場合は、服用をやめれば改善します。
また抑肝散のように、小児神経科領域の病気に対しては母子ともに服用する必要のある場合もあります。
 薬用量について、漢方業務指針などを考慮し、次の用量がよいとされています
 漢方薬の投与量の目安 
急性疾患

・必要に応じて常用量の2~3倍を使うこともある

慢性疾患

成人   中学生   小学生   6歳   3歳    1歳
 1     1       /3    1/2  1/3  14~1/
・または 体重1kgに対してエキス剤0.2g
   漢方薬の服薬は小児によって問題なく食べてくれる子もいるが舌触りや苦味がいやでなかなか飲まない子がいます。その場合は 
 ・ 単シロップやメープルシロップを加える。
 ・  ココアまたは、きな粉に混ぜる。
 ・ 夏ならシャーベットに冬ならゼリーにして食べさせる。
 ・  空腹のときにカレーやシチューなど味の濃いごはんやオヤツに混ぜて食べさせる。
 乳児は頬部の内側にすりつけて哺乳させる。
 五苓散、小建中湯、十全大補湯、甘麦大棗湯などは甘いために子供にとっても飲みやすく、一般的に長期の服用も可能です。
 
小児に多い病態の漢方的分類
冷えによる疼痛(原因不明の関節痛、腰痛、低体温)
微熱、盗汗、鼻出血
食欲不振、胃腸障害、易疲労感、
食欲旺盛、肥満、便秘、易疲労感
気虚、気滞、気逆 起立性調節障害、心身症
思春期の不定愁訴、月経痛
水滞 無気力、思考力低下、易疲労感、めまい、頭痛、下痢
 
一般的な漢方処方
感冒性嘔吐症 五苓散
遅延性下痢症 真武湯、人参湯、啓脾湯
反復性臍疝痛 小建中湯、桂枝加芍薬湯
反復性鼻出血 黄連解毒湯(常用量の1/2~1/3で可)
夜泣き、憤怒けいれん 抑肝散または甘麦大棗湯
寝ぼけ 柴胡加竜骨牡蠣湯
成長痛 柴胡桂枝湯、桂枝加朮附湯
めまい 苓桂朮甘湯、補中益気湯合苓桂朮甘湯
鼻アレルギー 麻黄附子細辛湯
反復性口内炎 黄連湯、半夏瀉心湯、温清飲
喉の痛み 黄連解毒湯または桔梗湯のうがい・服用
口内炎、歯肉炎による痛み 黄連解毒湯の塗布、桔梗湯の服用、立効散のうがい・服用
喘息性気管支炎 麻杏甘石湯、小青竜湯、苓甘姜味辛夏仁湯、
反復性扁桃炎 小柴胡湯(加桔梗石膏)
反復性中耳炎 小柴胡湯加桔梗石膏(合柴胡清肝湯)十全大補湯
浸出性中耳炎 柴苓湯合柴胡清肝湯
副鼻腔炎による鼻閉、膿鼻汁、咳嗽 辛夷清肺湯、葛根湯加川芎辛夷
肝機能障害 小柴胡湯、柴苓湯
おむつかぶれ、鶏眼 紫雲膏
伝染性軟属腫 薏苡仁(エキス)、五苓散合薏苡仁湯
 
  1.感冒
     風邪症候群に対する漢方治療の原則
    1) 葛根湯、麻黄湯、桂麻各半湯などを早めに、多めに。
    2) まずは発汗が肝要(発汗させるために漢方薬を服用)
    3) 桂枝で体表を温め、麻黄で発汗
    4) エキス剤に桂皮末を加えると効果倍増
   一般的には、まず麻黄剤で発汗を試みます。高熱であれば麻黄湯を軽症であれば葛根湯を用います。
ただし身体の  抵抗力が弱った状態のときには発汗していることが多いのでそのときには 桂枝湯(自然発汗)や香蘇散(特に胃腸虚  弱や乳幼児)を使用します。
また吐き気を伴っている場合は小半夏加茯苓湯五苓散を併用するか始めから五苓散を投与するといいです。
  2.小児喘息とアトピー性皮膚炎
   ともに根本的な原因はアレルギーです。
小児もアレルギー疾患に対する漢方処方の指標として、食が細いか太いか( 胃腸機能)、慢性的な扁桃炎や耳鼻科疾患の有無があるか、があります。
前者に対しての典型的な処方は小建中湯で あり後者に対しては小柴胡湯です。
またかぜにかかりやすいか否か(肺の虚弱の有無)、寒熱、気水の有無も指標とな ります。
 
  1)    喘息:一般的には麻杏甘石湯、小青竜湯、神秘湯などの麻黄剤を使用します。今日では治療法が進歩していることから漢方的には発作予防としての役割が期待されます。
ステロイド吸入をしていると予防はできますが 長期に渡ると成長に影響があるのでは・・といった懸念が残るご両親が多いのではないでしょうか? 
 
      表4 小児気管支喘息に対する漢方処方の実際

体質

発作期                  寛解期
実証~中間症:胃腸は弱くない 麻杏甘石湯      柴朴湯(心因性、感染型、咳型)
  五虎湯        合         柴朴湯
  五苓散  →   麻杏甘石湯   →   神秘湯
              または         小青竜湯
             神秘湯(呼吸困難型、痰が少ない) 
虚症:胃腸が弱い 苓甘姜味辛夏仁湯(水様性鼻汁、小青竜湯が使用しにくい者)
六味丸(難治性で再発を繰り返す時、腎精を補うので抵抗力がつきます)
小建中湯
(黄建中湯)(疲れると発作が出る)、補中益気湯
 
 2)   アトピー性皮膚炎:アトピー性皮膚炎は皮膚疾患ですが、根本的には胃腸の疾患と考え、皮膚局所の状態とともに胃腸の虚実も観察しながら漢方を選びます。またストレスによっても悪化するので、肝の異常や気の異常と考えて、甘麦大棗湯、抑肝散、柴胡桂枝湯などの気剤を組み合わせるとより効果的です。
 
      表5 小児アトピー性皮膚炎に対する漢方処方の実際
 乳児期
 (胃腸機能が未熟)
 治頭一方、小建中湯、補中益気湯、
 黄耆建中湯、桂枝加黄
 幼児期
  (ストレスに反応するようになる)
 柴胡清肝湯、補中益気湯、黄建中湯
 抑肝散(抑肝散加陳皮半夏)、十味敗毒湯
 学童期
 (ストレス反応が顕著になるために柴胡剤も用いる)
 十味敗毒湯、柴胡清肝湯、柴胡桂枝湯
   3.LD(学習障害)に用いる主な漢方処方
  学習障害とは、基本的には全般的な知的発達に遅れはないのですが、聞く、話す、読む、書く、計算する又は推論する能力のうち、特定のものの習得と使用に著しい困難を示す様々な状態をいいます。その原因として、中枢神経系に何らかの機能障害があると推定されますが、知的障害、情緒障害、環境的な要因などが直接の原因ではありません。
 黄連解毒湯:清熱剤として使用されますが、脳の働きを良くする作用、脳の血流改善作用もあります。 
 柴胡加竜骨牡蠣湯:精神不安があり驚きやすく落ち着かない気持ちを安定させます。
 桂枝加竜骨牡蠣湯:②のタイプに似ているが、より体力のない小児に用います。
 六味丸:発育を促すツボを活性化して、脳や体の発育を促進します
 抑肝散加陳皮半夏:感情の不安定、興奮、怒りやすい、寝つきが悪い気持ちの不安定な小児に使用します。
 補中益気湯:胃腸が弱く食欲がなく、疲れやすく寝汗をかきやすい小児に使用します。
 小建中湯:元気がなく顔色が悪く、夜尿症やよく腹痛を訴える小児に使用します。
        これは胃腸を元気にして腸でつくられる免疫機構を改善するのでアレルギー疾患などに体質改善作        用を期待し てベースとしてよく使用します。
 晶三仙:健康食品ですが米 小麦 たんぱく質の消化を良くして胆汁の流れをよくします。   
      脂濃い物などが 消化しきれず湿熱となってできるニキビや湿疹の改善に効果的です。
   4.小児心身症
  心身症には気滞や気逆が関係していることが多くみられます。無気力、思考力低下などは水滞によって引き起こされます。
このことを踏まえて乳幼児期、幼児期、学童期の3期に分けて漢方薬を選びます。
幼児期の嘔吐、腹痛、便秘に代表される反復性臍疝痛には小建中湯や桂枝加芍薬湯が効果的です。
学童期の習慣性頭痛の大半は筋収縮性頭痛が起因しているので、柴胡桂枝湯などが、過敏性腸症候群には桂枝加芍薬湯、小建中湯、柴胡桂枝湯などで対応できることが多いといわれています。

  表6 小児のストレス性疾患と適応する漢方処方




 

乳児期 夜泣き
泣き入りひきつけ
疳の虫
甘麦大棗湯
抑肝散
柴胡加竜骨牡蠣湯

幼児期

反復性臍疝痛
寝ぼけ、夜尿症チック、イライラ
小建中湯
柴胡加竜骨牡蠣湯

抑肝散
柴胡桂枝湯

学童記

習慣性頭痛
起立性調節障害
過敏性腸症候群
脱毛症
不登校
柴胡桂枝湯
補中益気湯
桂枝加芍薬湯

抑肝散
   5.起立性調節障害
      10歳以上の小児に多くみられ、起立性低血圧による自律神経障害のためにめまい、立ちくらみ、食欲不振、頭      痛、易疲労感などがあり午前中調子が悪く不登校の原因になることも多いようです。  
苓姜朮甘湯:めまい、乗り物酔い、耳鳴り、頭痛など水毒に対して最初に使用します。
真武湯:寒がりでむくみがあり下痢しやすい子供さんへ。
半夏白朮天麻湯:寒がりでもむくみがなく食欲不振や倦怠感など脾虚が見られる子供さんへ食欲不振、倦怠感が強い時には<人参湯を併用するか補中益気湯を用います
 小建中湯、黄耆建中湯:臍疝痛を訴える場合に使用します
   
 参考
表1~6の出典:広瀬滋之、小児科領域と漢方医学、TSUMURA Medical Today BSC番組「領域別入門漢方医学シリーズ」
 丁 宗鐵・森 由雄、漢方処方のしくみと服薬指導、南山堂
 丁 宗鐵・佐竹元吉、スキルアップのための漢方相談ガイド
 日本薬剤師会編、漢方業務指針、じほう
 あきた漢方薬局、http://www.kanpow.jp/index.php?c=15-123