移りゆく日々

J.Kou

夕食

今日の夕食は、肉じゃがとさらだである。妻が孫娘に、夕食のおかずは何がいいかと聞いて、こしらえたものである。どちらも私の好物でもある。妻が出かけ、遅く帰った孫が夕食を食べ始めると、しかし私は飲みに出かけた。
酒場の気だるい雰囲気、男女の他愛もない笑いの交歓、孫達との食事より、私はそれを選んだのであった。
ビールを飲んだ。しかしラーメンなりチャンポンを食べたいと言う食欲を押さえた。
今夜はこのまま帰って、妻が作ってくれた肉じゃがやさらだを食べよう。
孫達もそれを、おいしく食べたはずだ。私も帰ってそれを食べよう。
40分ばかりの帰りの道のりを、ふらつく足取りで歩いた。
店の華やぎに及ぶべくもなくとも、我が家のテーブルは、空腹に満足であった。
妻が作ってくれたものを食べた、孫達と同じものを食べたという、ただそれだけの事が
私にはなにより、嬉しいように思えるのであった。



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