移り行く日々

J.Kou


雪の日の日直



大雪が降るというので、今日は臨時休校である。私は上の雪道を歩いて学校へ来た。肩のリュックとカバンが、雪の道では殊更に重たく感じられた。鋭い冷気と寒風に吹かれた。
学校に着くと、引きつづき校舎外の巡回、点検を行った。校庭の木々にも作業棟にも、雪が積んでいる。土を掘り返す工事の機械も、腕が折れたように雪をかぶっていた。
さすがに出てくる職員は、午後2時現在、誰もいない。教室や屋上の作業をした人たちも帰り、宅配の人が2人と郵便やさんが来たばかりだ。机上の電話を10本ほど受けた。
先程まで薄い日差しが見えたかと思うと、またもや寒風が、金属の柱に旗紐を打ち付けている。
今日は孫娘の、私立高校受験の日でもある。娘が朝早くから起きて、色取りのきれいな弁当をこしらえていた。今ごろ問題集を前に、しきりに首をひねっていることだろう。家では子供々に見えるが、はや15の春、空に吸わるる15の心である。ひそかに人を想うこともあるだろう。
しかし日常の生活で、孫と祖父と、人生の展開と終えんへ向かう者との、その間の話題の乏しさを感じることが多い。明朗闊達な妻は、だがものともせず、家族の信頼を一身に受けている。そして私よりは、はるかに深く孫たちを愛している。私は自ずから、屈折した心持に陥らざるを得ない。
学校が静かなせいか、愚痴めいたことをこぼしてしまった。夕刊が来たのを見て、もうそんな時間なのかと、時計を見上げた。外はまた、ひとしきり雪が降り出して、帰り道がつらく思えるのであった。
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