J.Kou


お庭



庭の花壇に大きな花が3個咲いた。1個と2個、いずれかがボタンとシャクヤクである。妻が指し示すのを見ながら、私はその美しさに感じ入った。ほら云うでしょ、座ればボタン立てばシャクヤク、歩く姿はユリの花。この花々がそうなのかと、私は改めて感じ入った。この雑然とした庭に、そんな高名な花が咲くとは知らなかった。妻は草取りはしない代わりに、感心に花だけは植える。玄関の鉢にある花をたずねたら、あれは人にもらったポピーだと云った。ああポピー、ポピーの花、私は吟行会の人たちと、ポピー園へ行った日のことを思い浮かべた。句作に首をひねったものだが、あの人達も今はどうしているだろう。何もかもがずんずん過ぎて行く。
庭のもう片隅には、私が苗ものの野菜を植えた。ニガウリ、キュウリ、ピーマン、トマトなどである。この頃、竹の手を添えたばかりだが、ニガウリにもうアブラムシが付いたらしい。堆肥を作ろうとしたコンポストには虫がわくし、ちょっと面倒になった。せまい庭には物干し竿もあって、孫娘らと5人家族の洗濯物が風にひるがえる。なかにゴムの伸びた私のぱんつなどもあって、じつに見劣りがする。これらをかいくぐっていかにも勤勉らしく、私は朝に夕べに野菜に水をやるのである。
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