移り行く日々

J.Kou

古処山へ登る



古処山へ登った。800数10メートル、登山口から頂上まで、2時間以上を費やしたと思う。リュックには水を充分準備した。500ccのペットボトル3本、のり弁、カメラなどを入れた。岩々の荒っぽい足場を踏んで、ようやく頂上の空が見えた時には嬉しかった。頂上は家1軒分くらいの狭い場所であった。木立の間に、深い下界が広がって見えた。しかし私は風景よりは、ここまで来たことの証しとばかり、ぱちぱち写真を撮った。惜しむらくそれはまだリュックの中、上のは花立の代用に過ぎない。時間は既に2時をまわり、私は疲労困ぱいしていた。取り出した弁当にも食欲はなく、むしろその塩っぽい味を怖れた。あと1本の水しかない、ここで余計な塩分をとりたくなかった。そこそこに弁当を終え、2口3口の水を含むと、私は再びリュックを背負った。随分手荒な山であったが、遂に頂上まで登ったことの満足が、じわりと胸に広がった。下り道になって、鳥の鳴き声や渓流の音にも、ようやく耳を傾けるゆとりが出来たように思った。女性に例えるなら、無愛想骨太にして、気はいいのかも知れない。何しろ秋月という環境に恵まれている。私もしばし移り気を封印し、、しばらく古処山と付き合ってもいいという心持になるようであった。
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