移り行く日々

J.Kou

カラオケ練習



先月から女性の先生に習っている。お会いするまではどんな先生だろうかと、想像を逞しくしていた。おそらく30の坂を登ろうとする人生の華どき、豊満な肢体と豊かな歌唱力、そして優しい先生の眼差しを胸に描いていた。いわば世の多くの老人が思うであろうことと、さして変わらないだろう。私の夢としての想像はおおむね当たった。ただ30の坂を60の坂と訂正するだけでいい。先生のレッスンには、親切の中にも厳しさが伺われた。私は五木ひろしの「逢えて・・横浜」と「ふりむけば日本海」を神妙に歌った。先生は、きれいな声ですねと云ってくださったが、後で録音機で自分の声を聞いて驚いた。なんと不明瞭な発音、やせ細った声だろう。これで何かの望みがあるだろうか。私は今まで臆面もなくカラオケ店で歌っていたことを恥じた。
細川たかしの「城崎恋歌」を練習しておくように云われ、私はこの1週間毎日これを歌った。「ふりむけば・・」も歌い込んだつもりだが、さてどうだろう。先生には他についても尋ねてみたい。カラオケ店で、客がキィーを1つ上げたいというが、あれは例えば、ハ長調の曲ならニ長調に変えること、つまり#が2つ付くことでしょうか、などと問うてみたい。もしも的確に教えてもらえたら、先生への信頼も増すだろう。これから先、歌の上達、不上達のいっさいをここにお任せする。
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