移り行く日々

J.Kou


ひとときの宴

昨日はSさんと、その友人2人と、4人で温泉へ行き、囲碁の後、休憩室で酒を飲み、飯を食った。休憩室の大広間は、圧倒的に婦人方が多く、初老、中老、大老と、それぞれに年輪を刻んでいる。江戸の家老職みたいだが、つまりは美人も不美人も十人並みも、老いればその容姿に大差がない。男と同様、十把ひとからげに、じいちゃん、ばあちゃんなのである。頭にタオルを巻いて、ビールのコップをぐびりとやっている婦人も、うん10年の昔には、正月ともなれば、赤い帯の着物で、ひいふうみいと、羽根をついたことであったろうか。実際のところ、そんな風情は思いも及ばない。しかし人々は、こうして笑いさんざめき、今を生きている。飲みかつ食い、今日を堪能している。
私たちも酔った。酔いがまわると、人々の話し声が意味をなさず、うわぁ〜んという音に聞こえた。さあ、風呂に行こうかと、Sさんが云った。浴場へ入ると、ガラス戸の外には、暮れやすい日脚が伸びていた。今日は実に楽しかったよと、誰かが云った。


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