移り行く日々

J.Kou


花立山



花立山へ登った。125メートル、小郡ただ1つの山である。宝満か古処山を目当てにしていたのだが、なかなか気分が高揚しないからここへ来てしまった。体力気分転換のための運動として手ごろである。途中で2人の男性と出会った。下りる時、賽銭箱のある頂上で、ぱんぱんとかしわ手を打つ音が聞こえた。律儀な人だと思った。私も来世の幸せを願って、お参りすればよかったと思った。下には広い池があり、ボート小屋があった。別の池には芭蕉が青々と茂っていた。いつか吟行会の人たちと、ここへ来たことを思い出した。私は妻に、もう一度あの会へ戻ろうかと云ったことがある。すると妻は、だめよ、あそこは勉強する人たちだからと返したものだ。然りなり尤もなり、何事によらず私は、おおむね勉強から遠いところにいる。花立山は小にして品格があった。深い木立の間から、石段に木漏れ日が泳いでいた。さあ、ここで足腰を鍛えたら飛翔あるのみ、宝満へ古処へと鼓舞するように思える。こんもりした山を振り返りながら、私はバイクのヘルメットをかぶった。
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