移り行く日々

J.Kou

吟行会を待つ



妻と風呂屋を出て、夜空を見上げると、月がぼんやりとにじんでいた。今夜はおぼろ月夜だなと云ったら、それは春の季語だと云った。何だって得意そうに云うところがある。空が曇っていて月がぼんやり見えるから、私はそう云ったのだが、では夏にはそんな月を何と呼ぶのだろう。
木曜日の朝、カバンに歳時記などを入れ、お茶も入れ、セブンイレブンでのり巻きを買っていつもの句会所へ行ったら誰もいなかった。そこの人から俳句は来週ではないですかと云われて気が付いた。今週はいくつかの句作を準備していたので、いくらか気負ったのかも知れない。ここまで出て来たのだからと、かかりつけの医院で、前立腺の薬をもらった。この頃足の親指の辺りが痒いので、皮膚科へ行ったら水虫ということであった。緑内障、前立腺に水虫か、よくぞ色々なものがやって来る。次はそろそろ癌だろう。週刊誌などで、「癌との壮絶な戦い!」の記事をたまに見かけるが、私には到底無理である。「癌からの必死の逃走!」を試みるにしても、つまりは捕まるわけである。今のうちから、高々と白旗をあげておきたい。それにしても吟行会の、かずさん82歳、ともえさん83歳、お2人ともよく頑張るものだ。ともえさんは、私の恐れる緑内障で、すでに視力障害であるが、根気よくカラオケを習っている。1度その歌声を聞いてみたいが、俳句の先生が、ともえさんに教えてもらいましょうと云われた時には、テーブルのみんなが笑った。この7,8人の人達が、1つの家族であるかのように思えるのであった。
カラオケといえば、私も次から習うことになった。未知の女性の先生というだけで楽しい。水虫をかかえ、、癌からの逃走を考える老人の胸にも、まだ明るい希望の灯は点るのである。
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