身辺日録

J.Kou

退屈

昨日の夜は、公民館での仕事だった。夕食をそそくさと済まし、カバンを持って出かけた。中には本やメモ用具、お茶、懐中電灯が入っている。公民館の大切な鍵は、胸のポケットに収めた。勤務時間は、19時から22時までだが、実際はそれより早く出かけ、少し早めに終わることが多い。その夜は、母と女教師の会であった。20台の車に、31名の人たちがやって来た。夜のサークルの、ダンスでもコーラスでもない。学校教育の話し合いなのだ。夜の時間を割いて、こうして集まって来る人たちの熱意によって、学校の教育は支えられているのかも知れない。私はその間、じっと事務室で、時間が過ぎるのを待った。カバンから、古い文芸春秋を取り出して、芥川賞の「蛇とピアス」を読み始めた。作者は19か20の女性である。小4頃不登校、高2頃彼と同棲、今は別の彼たちと、つまり交互に付き合っているようだ。その性描写は風俗嬢並である。そして将来を嘱望される、若い芥川賞作家なのだから、大したものだ。ところどころ拾い読みした後、次は囲碁の本を広げた。棋力向上、上達必至、初段への道である。しかし昼間の碁会で、1勝3敗であった成績を思うと、なかなか気勢も上がらない。私は部屋の中をぐるぐる歩いて、また席に座った。今日は歌のテープでも持ってくればよかった。渡哲也の「あじさいの雨」「くちなしの花」がいい。女歌だが、「カスバの女」や籐純子の「私の人生暗かった、明日はジョージかケン坊か」もいい。今夜の仕事が終わっても、明日は学校の日直1日、そして夜はまた公民館である。こんな生活が、ここ数日続いている。実際のところ、気分的に少し参っている。明るく楽しく朗らかに、唇に歌を持って生きるとは、なかなか難しいものだ。
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