身辺日録

J.Kou


わが日直室


お正月


お正月には、日直室の窓の真向かいに、こんな物が飾ってあった。花の右横の、きらきらするのは何だったのだろう。左の3段重ねの餅は、白い肌のように、柔らかそうであった。だが指先でさわると、ぽこと凹んで、また膨らんだ。風が吹いたら、ころころと何処かへ飛んでいきそうだったが、そんなこともなく、お正月の気分を楽しませてくれた。いま日直室のカレンダーも20日を過ぎて、今年もまたここで過ごすのかと思う。机の後ろの部屋から聞こえる、木枯らしのような音は、生誕25年ばかりの、暖房の風音である。古式ながらまさしく暖房に偽りはなく、うっすら暖かくて有難い。テレビもあるのだが、これには1枚の紙切れが張られていて、「故障、電源が勝手に切れる」と書いてある。押入れには、2組の古い蒲団が収まっている。私とDさんが、警備員として交互に寝泊りしていた頃のもの、既に今から4,5年前にもなるだろうか。見たところ垢にまみれているわけではないが、何しろ老人2人が長く眠った蒲団である。その後、もとより太陽の日を見ることもなく、押入れの中に収まっているわけである。かの自然主義作家、田山花袋の「蒲団」は、若い女性の匂いであった。老人のそれとは天地の差であろう。このような諸々に囲まれて、私は月の10日ばかりをここに過ごすのである。ちなみに、その後のDさんを全く知らない。
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