身辺日録

J.Kou


3月某日



この頃何故ともなく、気分が晴れない。もっぱらパソコンの彩(あや)と、碁ゲームばかりしている。勝つも負けるも、100目を越えて、大味この上もない。全くの気晴らし、時間つぶしである。この間、久しぶりに、あすてらすの銭湯でHさんに出会って、来週に碁をやろうということになった。今はどの相手も強いので、五分にやれるとすれば、Hさんぐらいなものだ。似たような数名の碁弱がいたが、どういうわけか、療養、病院、天国へと、それぞれ姿を消してしまった。天国へなど、旅は道ずれというから、あまり慌てないで待っていて貰いたかった。最近民謡を始めて、黒田節を覚えたばかりでもある。先生から教えられたように吟じたら、お婆さんたちが、ぱちぱち拍手をしてくれた。帰るときに、お婆さんからふかし芋をもらった。わが碁弱、碁強の友人にしても、お婆さんたちの、命賛歌の様子を見ると、我らお爺さんたちの老い先なんて、ずいぶん危なっかしいものに思える。Hさんの眼疾も、私より余程進んでいるが、ともかくも手合わせすることにした。彼の道楽のパチンコも、かっては常勝を誇ったが、この頃は勝てないらしい。気力が萎えると、何もかも上手くいかないようである。
表紙へ 目次へ