身辺雑録

J.Kou

川風に芥舞ふごと冬の鳥

今日は吟行会だった。肩からカバンを掛け、帽子、手袋、それにズックを履いて歩いた。橋を渡る時には、殊更に風が冷たかった。どんよりとした低い雲と、重たげな川の水の色が呼応するかのように、うっとうしい冬景色である。それでも釣り人が一人いた。このまま行けば40分足らずの道のりなので、少し遠回りをした。セヴンイレヴンで、昼の海苔巻を買った。カバンには「1日分の野菜」ジュースが2本入っている。集会所に着くと、82才のかずさんと、新人のゆかりさんがお休みだそうである。少ない人数の上に、1人でも休まれるとことのほか寂しい。寒さ厳しくにもかかわらず、先生の車で、どこそこの公園まで出かけた。乗れない人は電車であった。ペット入園禁止の公園の、広い池には、数多くの鴨が泳いでいた。森の中から、多分カラスの鳴き声が鋭かった。この池の鴨、公園の情景が、今日の句題であったさっそくそれぞれが手帳を取り出し、頭をひねり、鉛筆をすべらせ、喋ってはまた黙りこくった。私がふと鴨料理と言ったものだから誰かが笑った。公園の片隅に、青いテントようのビニールが1つ張られていて、年かさの男女がいた。簡単な生活用具が置かれていて、どうやらホームレスの人たちのようであった。この寒風の中で、彼たちはどのように生活し、そして夜の静寂に眠るのであろう。
集会所へ戻った時には誰もが安堵した。1人だったらとてもこんな日には出れない、と誰かがつぶやいた。この日の俳句の出来は、昨夜遅くまでの準備のせいで、まずまずであった。準備がなければ、即興に10句作るだけの力は、私には到底ない。
 太陽の光を吸えと蒲団干す 寒林の屋敷に翁一人住む 看護士のマスクなき顔見たかりき
 夜業終えカーテン引く窓冬の月 川風に芥舞ふごと冬の鳥 寒禽の鋭き声の池広し
駄作としての、 生命の羽ばたきなるか池の鴨 食卓の白菜朝餉をしめくくる 白菜の漬物鉢に赤い箸 の3句が、私には案外に思われた。
小皿のおやつは、チョコレート、ソーセージでちょっとさみしかった。ピーナツ、油豆、あられの類が欲しく、つまりはビールのつまみのようなものであった。         
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